ぐるんぱのようちえん
入園・入学の季節にピッタリ!ゾウのぐるんぱの幼稚園へ行ってみたくなります!もうひとりぼっちじゃないよ!沢山の素敵な友達に、きっと出会えるよ★
☆際立った特徴
1965年に発行された、約60年子ども達に愛され続ける大ベストセラー絵本です。
水彩画で描いており、優しさや温かみを感じることが出来ます。
ひとりぼっちで暮らしていた体の大きいゾウのぐるんぱ。働きに出て、はりきって仕事しますが、何でも自分サイズに作ってしまうものですから、なかなか周りから受け入れられず、上手くいきません。しかし、最後は自分の力を活かして、自分がはりきって作った物全てを活用して、子ども達にとって楽園のような、素晴らしい幼稚園を開くのです。
☆あらすじと書店員の感想
ひとりぼっちのぐるんぱ。体を洗う事も出来ず、汚くてくさい臭いがします。寂しくて時々泣いてしまいます。そんなぐるんぱを、独り立ちさせようと、ジャングルのゾウ達が背中を押します。
本文に、「ひとりぼっちで暮らしてきたので、すごく汚くて、くさーいにおいがします」とあります。なんと!!涙・・・。
出だしの一文なのですが、その言葉と、ぐるんぱが横たわって寂しくて涙している絵を見て、私は胸がはち切れそうなほど、切なく感じました。
なんて可愛そうなぐるんぱでしょうか。
きっと、一人はとっても寂しくて、何をするにも楽しくなくて、気力も無く過ごしてきたのではないでしょうか。
他のゾウが側にいれば、一緒に水浴びをして、一緒に体を洗い合いして、キレイにする事が出来るのかもしれませんが、ぐるんぱは一人です。誰も一緒に体を洗い合ってくれる友達や家族もおらず、体が汚れたままだったのですね。
そんなある日、ジャングルのゾウ達は、なんとかぐるんぱを独り立ちさせようとします。仲間に入れてあげればいいのでは?と、思ってしまう場面ですが、もうぐるんぱは大きくなったゾウなのです。働きに出るような大人なのです。
きっと、ゾウ達の中で、『ぐるんぱに、自分の居場所を見つけて欲しい!』『胸を張って生きて欲しい!』そんな想いがあったのかもしれません。
そして、手分けしてぐるんぱを洗ってあげます。今までの汚れと、涙と、悲しみを、体の汚れと一緒に水に流します。
キレイになったぐるんぱは、見違えるほど立派になって、ニッコリ笑って出発しました。ひとりぼっちだと思っていた自分に、こんなに親切にしてくれる仲間がいたんだと、ようやく感じた事でしょう。
そんなぐるんぱに、ジャングルのみんなが、精一杯のエールを送ります。
「頑張れよー!」「無事に暮らせよー!」と。
どこへ行っても、はりきって仕事をし、作るのですが、大きすぎて必要とされません。そして、お店を去る時に一緒に持ち帰ります。
ビスケット屋では大きくて高級なビスケットを作ってしまいました。皿屋では、人間が入れる程、プールみたいな大きな皿を作りました。靴屋では人間がすっぽり入ってしまう程、大きな靴を作ってしまいました。ピアノ工場では大きいピアノで、人間が弾こうと思ってたたいても、音を鳴らすことが出来ません。自動車工場では、前が見えなくて運転出来ない程、長いスポーツカーを作ってしまいました。
どこへ行って、はりきって働いても、「もうけっこう!」と追い出されてしまうぐるんぱは、作ったものを抱えて持ち帰ります。増えていくとぐるんぱは、どんどん重たそうに運んでいきます。
持ち帰った物が増えるにつれて心まで重たくなっていくように見えます。どんどんしょんぼりと、ガッカリした気持ちが積み重なっていきます。そして、昔のように悲しくて涙が出そうになるぐるんぱなのです。
そんな時に出会った12人の子ども達。子ども達と遊んであげることになったぐるんぱ。そこで、ぐるんぱの才能が開花します!必要とされなかった物を全部使って、素敵な幼稚園が出来ました!
とぼとぼ・・・ガッカリしているぐるんぱ。
行きついた場所は、洗濯ものが沢山干されている場所です。そこで出会ったのは12人の子どもを育てるお母さんと子ども達。お母さんは、洗濯一つでも大変な仕事!12人ともなると、猫の手も借りたいほどでしょうね。そして子どもが大好きなお母さんんなのでしょう。子ども達と遊んでやりたいけど家事が終わらず、途方に暮れていたところで、目の前に何やら大荷物を持ったぐるんぱが現れます。「このゾウさん、なんだか面白そう!きっと子ども達と一緒に遊んでくれるはず!」そう直感したのかもしれません。
子ども達と遊んで欲しいと頼まれたぐるんぱは、ピアノを弾いて子ども達を楽しませ始めます。始め子ども達の中には、ぐるんぱの体の大きさに驚いて近寄れなかった子もいたでしょうが、ぐるんぱの楽しそうなピアノのメロディーに誘われて、ぐるんぱの元へ集まって来ます。そして、その楽しそうな子ども達の笑い声やピアノのメロディーが、12人以外の子ども達もどんどん誘っていきます。中には、ぐるんぱのように”僕はひとりぼっち”と思って寂しい思いをしている子ども達も、どんどん集まって来たのです。
そして、沢山の子ども達が集まるその場所は、いつしか素敵な幼稚園になりました。大きな靴もスポーツカーも乗り物の遊具になり、ぐるんぱの鼻の滑り台で滑った子ども達が、大きなお皿のプールに飛び込んでいきます。お腹が空いている子は、ビスケットを分け合いっこします。
なんて夢のような幼稚園でしょう。誰もが楽しく幸せに過ごせる、夢のような幼稚園です。そこには、悲しい思いをしている子は一人もいませんよ。ぐるんぱも、もうひとりぼっちではありません。
ぐるんぱの必要とされる場所、毎日が居心地がよくて、楽しくて幸せでいられる居場所が見つかったのです★
- 作品名:ぐるんぱのようちえん
- 著者名:作 西内ミナミ 絵 堀内誠一
- 出版社:福音館書店