ねんねのうた
おやすみ前の1冊にピッタリ!夜のこわさがとっても素敵な夢やうたに変わる、夜の魔法のようなお話です。親子のコミュニケーションが広がります。
☆3つのおすすめポイント
- 夜暗くなると、まわりから聞こえる音がなんだか気になってきますね。そんな音がこわいこうちゃんに、ママは優しくお話をしてくれます。どんな音かな、こわい音がどんどん素敵な音に聞こえてきますよ。
- 音のイメージが膨らむとともに、絵本の中のおばけちゃんたちのシーンも楽しさ溢れる素敵な場面が広がっていきます。幻想的なねんねのうたのシーンのタッチがとっても素敵です。
- 夜、一緒に寝るときの1冊にピッタリですし、あの音は何かな、と楽しいイメージが膨らみそうです。
☆あらすじ
夜になり、こうちゃんはママとねんねの時間になりました。
こうちゃんがベッドに入り、ママが電気を消そうとすると、こうちゃんは「電気を消さないで」と言います。
ママがどうしたの?と聞くと、
こうちゃんは、暗いとおばけの音が聞こえる、と言います。
ママも耳をすませると…
チクタク チクタク という音が。ママはこうちゃんに言いました。
これは、小さいおばけちゃんがダンスをしている音よ。こわくないよ。と。
つぎはお外からなにやら音が聞こえてきます。
カタ カタ カタ …
これはきっとおばけちゃんたちがたいこを叩いているんだよ、とママはこうちゃんに言いました。
それでもこうちゃんはまだこわいようす。
遠くからもなにか聞こえるよ、とお話します。
ヒュー ヒュー ザワ ザワ …
おばけちゃんが笛を吹いたり、木を揺らしたりしているんだね、とママが言いました。大きいおばけや小さいおばけ、木で居眠りしているおばけもいるようです。
こうちゃんは窓から外を覗きながら、
みんなでパーティーしているのかな、と言いました。
空には満天の輝く星たちがいっぱいで、こうちゃんに向かって降り注いでいるようです。
お星さまが歌をうたって、おばけちゃんたちと一緒にパーティーをしているよ、とママに言いました。
こうちゃんもまるで、おばけちゃんたちのパーティーに参加しているような楽しい気持ちになっています。こうちゃんはちょっと微笑んだような寝顔をして、眠りにつきました。きっと、楽しい夢を見ているんでしょうね。おやすみなさい、こうちゃん。
☆際立った特徴
寝かしつけにピッタリの絵本です。楽しいだけでなく、子どもの気持ちが安定して、ゆったり眠りに向かわせてくれるような内容と絵の描写です。絵の雰囲気もとってもキレイでおばけたちも可愛く、星が溢れているシーンは圧巻です。
絵本の大きさは21㎝四方の正方形で、厚みも少なく、布団で横になったときなども読みやすいサイズ感です。
☆書店員の感想
●夜暗くなると、まわりから聞こえる音がなんだか気になってきますね。そんな音がこわいこうちゃんに、ママは優しくお話をしてくれます。どんな音かな、こわい音がどんどん素敵な音に聞こえてきますよ。
寝る準備がすんで、ママと一緒に寝る時間になったこうちゃんですが、電気を消そうとしたママに「消さないで」と言います。こうちゃんは、暗くなるとおばけの音がしてくるから…と、不安そうにママに話します。
寝る前までは、テレビの音だったり、誰かの活動する音が何かしら聞こえていて気にならなかった音が、お布団に入って静かに横になり、電気の光を消して視覚からの情報がほとんど入ってこなくなると、急に聴覚が研ぎ澄まされるようにいろんな音が気になってくる…。夜ってそうなのかもしれません。
次男も一緒の布団で寝ていますが、なにか物音がすると、「あの音なに!?」と、日中は気にならないような音も気になって聞いています。お父さんが帰ってきた音はしっかりと聞き分けているようで、「おかえりとおやすみって言ってくるね!」と布団からいったん出てしまうので、大変ですが…。(笑)
大人にとってみれば、あの音は○○の音だな…、とすぐに分かったりするのですが、子どもにとってはまだまだ不思議で、何の音か分かるには、時間がかかるのかもしれません。
チクタク チクタク、という音もきっと時計の音だろうな、と想像しますが、こうちゃんにとっては、おばけの音。もし私がこうちゃんのように聞かれたら、「時計の音だよ、大丈夫」と言って終わってしまいそうですが、こうちゃんのお母さんは「ちいさいおばけちゃんがダンスをしているのかも」とお話してあげて、とっても素敵だなと思いました。カタカタという音はたいこをたたいている音、ヒュー ザワザワ、という音は笛を吹いたり、木を揺らしたりしている音…と、楽しいイメージが膨らんでいきます。こうちゃんもワクワクした気持ちがどんどんつのり、「みんなでパーティーしているのかな」とキラキラした表情で、カーテンから外を覗き込んでいます。
ダンスをしたり、たいこや笛の音。みんなで演奏し、キラキラと輝く星はおばけたちと歌を歌っているようです。こうちゃんはいつの間にか、イメージの中でおばけや星たちとお友達になっています。
ママの素敵な声かけで、こうちゃんの音に対するイメージは、キラキラと輝くものに変わっていきました。そして、とっても穏やかな表情で眠りにつくことができました。
大人になると、こうちゃんのママのような想像力が減ってしまうように感じます。私自身実際にそう感じていて、子どもからの言葉でハッとしたり、いろいろ気付かされたりする日々なのですが、こうちゃんのママのように「子どもが喜ぶ声かけってなにかな」と、子どもの心に寄り添い、温かみや夢が広がるようなお話をしてあげたいなと思いました。
●音のイメージが膨らむとともに、絵本の中のおばけちゃんたちのシーンも楽しさ溢れる素敵な場面が広がっていきます。幻想的なねんねのうたのシーンのタッチがとっても素敵です。
チクタク チクタク、とおばけがダンスを踊っているときは、時計の針が足元についているようなおばけが一人、踊っている絵が描かれています。つぎにカタカタ…、おばけがたいこを叩いているね、とお話している窓の外では、おばけが2人。たいこのバチを持って窓をカタカタ鳴らします。ヒュー ザワザワ、と音がしている時には、家のうしろに大きなおばけがリコーダーのような縦笛を吹いていて、家のまわりにある木を小さなおばけたちが6人、木を揺らしています。時計とたいこのおばけも一緒にいるので、おばけがだんだん増えてにぎやかになっていきます。
夜の描写ですが、木も青色や紫色、ピンク色もあって可愛らしいです。
そして、こうちゃんが、パーティーをしているのかな、と外を覗いたつぎのシーンでは、大きな輝くお月さまが上にあり、その下にはいろんな大きさの星がたくさん光り輝いていてこうちゃんのもとに降り注いでいるようです。窓一面星がきらめいて、こうちゃんを包み込んでいます。
このあたりから、こうちゃんはもしかすると、もう夢の中なのかもしれません。こうちゃんとママのまわりは、笑顔で歌っている星たちと楽しそうに踊ったり演奏したり、パーティーをしているような星とおばけがいっぱいで、ふたりを誘っているようです。
こうちゃんはおばけに手をひかれ、夜の空へとふわり浮いています。まわりには色とりどりに輝く星たちと、10人の可愛いおばけたち。キラキラと輝きに埋め尽くされて、とってもキレイです。みんな楽しそうで、いつの間にかこわいと思っていた音は優しく響く音色となって、こうちゃんをあたたかく包み込みます。
絵の配色も優しい色で、光り輝いている部分などの滲みやぼかし具合も読んでいるこちらまで包み込まれ、優しい気持ちになるようです。おばけや星たちの優しい歌が聞こえてくるようですよ。
●夜、一緒に寝るときの1冊にピッタリですし、あの音は何かな、と楽しいイメージが膨らみそうです。
夜寝る前、耳を澄ませるといつもは気にならなかった音がきっと聞こえてきますね。一緒に寝るときにこの絵本を読んで、お子さんと一緒に耳を澄ませてみるのも良いコミュニケーションとなりそうです。また、絵本の絵がとってもファンタジー溢れる描写で、いろんな音を聞きイメージすることで、絵本の世界観がさらに広がっていきそうです。
楽しくて優しいねんねの音を聞いて眠った、こうちゃんの寝顔が本当に可愛らしくて、わが子の寝顔を思い出すようです。子どもの寝顔って癒されますね。
大切なひつじのぬいぐるみと手をつないでいるこうちゃん。表紙のこうちゃんもいい夢を見ているんだろうな、というようすが伝わってきます。子どもの音に対するこわさを楽しいものにしてくれるお話ですが、大人も一緒に癒されるお話と絵のように感じました。
夜、だいたい同じような時間に絵本を読むことで、そろそろ寝る時間、ということが子どもに伝わるそうですね。それから自然と生活リズムが整えられるようです。寝る前の親子時間に、優しくてあたたかい、親子のコミュニケーションが広がる素敵な1冊です。きっとお子さんもいい夢が見られますよ。