ぼくのつくりかた
工場で、なにかの材料を混ぜ合わせると、何かができるよ。ぼくはいったい、何と何でできているのでしょう?いろいろな材料の組み合わせで、何が作られていくのか想像するのが楽しいお話です。切り絵のイラストも素敵!
☆3つのおすすめポイント
- あるものとの組み合わせで、何ができていくのかが想像するのが楽しいお話です!何かが作られていくときの音もリズミカルで、面白いです。
- イラストが切り絵でできています。工場の機械や働く人たちも細かく作られていて、圧倒されるような迫力を感じます!色合いもキレイ!
- ぼく、私は何からできているのかな、何が好きなんだろう、と好きなことに対するイメージが膨らみます。想像力が大きく広がる、楽しみがいっぱい詰まった絵本です!
☆あらすじ
工場では、いろいろな生き物や、はたまた「人」が作られているようです。今日も一日が始まりますよ。
黒い工場の機械の中に、工場の従業員のようなひとたちと、いろんな材料が描かれています。
まずは、まるいリンゴと、長いキャンディ、あまいバナナに、茶色いドーナツ。これを機械に入れると…。ぽんっ、ぽこん。と、さるが出来上がりました。
つぎは、クロワッサンとピンクの桃、長いフォーク、くねっとしたじょうろです。いったい何ができるでしょうか…。ぱかっ、ぷすっ、と、フラミンゴが出来上がりました。体が先に作られて、しあげの段階でフォークのような足が取り付けられています。
今度は、でこぼこのきゅうりと、はさみ、歯ブラシにピーマンです。この4種類を合わせると…。なんとワニが出来上がりました!大きい口を開けて、最後に鋭い歯をつけています。
つぎは、もこもこの毛糸に茶色のビスケット、バサバサのほうきに丸い時計、ふさふさのブラシです。材料が5つに増えましたが、さて、何になるのでしょうか…。
なんと不思議なことに、かっこいいライオンになりました!ちょきちょき、と最後にたてがみのセットをしています。
つぎは材料が6つになりました!棒付きのキャンディに、緑の葉っぱ、紫色のブドウと青いビン、赤いサクランボに、洋ナシです。
出来上がったのは、くじゃくです。果物の丸い果実が、くじゃくの羽にマッチしていてとてもキレイです!
今度は5種の材料で、水玉のきのこ、棒付きのチョコ、とうもろこしに長いフランスパン、それからレモンが混ぜ合わさります。すると…。なが~い首のキリンが出来上がりました!
次は材料の種類がたくさんです!りんご、カブトムシ、お星さまにキャンディ、恐竜と色鉛筆、船、車、電車があります。これらを全部混ぜ合わせると…。「ぼくのできあがり」です!ぼくの好きなものが詰まっているのでしょうか。
甘いものや可愛いものなど、いろんなものがどんどん運ばれてきて、どんどん出来上がっていきます。いろんな「ぼく」「わたし」が出来上がっています。64人の子どもたちが描かれていますが、同じとする子は一人もいません。
あなたは何からできていますか。
☆際立った特徴
2016年、イタリア・ボローニャ国際絵本原画展入選作品です。絵は切り絵で作られていて、とっても緻密!絵の中に出てくる材料や出来上がった動物たちの色合いも可愛らしく、細かい世界に引き込まれていきます。
絵本の大きさは20.5㎝×30.5㎝で、大きめのサイズの絵本です。絵本の開き方も縦向きではなく横向きで、本の背表紙を上にして、下からページをめくっていくという珍しい楽しみ方の絵本です。
☆書店員の感想
●あるものとの組み合わせで、何ができていくのかが想像するのが楽しいお話です!何かが作られていくときの音もリズミカルで、面白いです。
いろんなものから、動物がつぎつぎ生まれていきます。最初はさるが出来上がりました。
ドーナツはころんとしたさるのかたちに、バナナはさるの大好物、リンゴはさるの赤い顔かな、ステッキのような長いキャンディはどこの部分だろう?と想像が膨らみます。機械から飛び跳ねているようなおさるのようすも可愛いですし、完成するときの「ぽんっ」「ぽこん」という音も耳に心地よく、声に出して読んで楽しみたくなります。
次のフラミンゴも、じょうろが体、フォークが足、桃がフラミンゴの体の色になっています。クロワッサンはくちばしでしょうか…?4つの材料がこの精妙な機械を通ってフラミンゴを作っていくと思うと面白いです。
ワニもすてきですね。背中のごつごつはきゅうり、体の色はピーマン、歯ブラシは歯のようです。はさみはどこに使われているのでしょうか。ワニの大きな口になっているのかな、とも想像しましたが、どうでしょうか。
ライオンの材料はなんだか可愛らしい感じもしますね。茶色やピンク、オレンジ色のものが目立ちます。全部が合わさると、立派なたてがみのライオンになりました。たてがみは手作業で切っていて、丁寧な仕事ぶりです!
つぎのくじゃくは、羽の描写がとてもキレイで見とれてしまいました。ブドウやサクランボの丸が羽となり、1枚1枚重なり合っています。葉っぱの緑や青っぽい色も混ざって、素敵な色合いです。洋ナシからできている体も可愛らしいです。
キリンは、たてがみの部分や体の斑点を手作業でつけています。首が長く、身長が高いキリンです。工場の機械も高さのある大きな機械になっています。長い筒からキリンの首がにゅっと出ているところも面白さを感じました。
そして、「ぼく」が作られたとき、いろんなものが組み合わされていました。「ぼく」の表面には動物たちのように材料の特徴は出ていませんが、ぼくの内面にしっかりと入っているのだろうと思いました。いろんな子どもたちがいて、好きなものもきっといろいろ違うんだろうな、ということが伝わってきます。
●イラストが切り絵でできています。工場の機械や働く人たちも細かく作られていて、圧倒されるような迫力を感じます!色合いもキレイ!
イラストの細かさがとにかくすごいです!表紙からビックリしたのですが、工場は全部切り絵で作られています。そして、機械には材料が必ず入っています。工場の機械の形もページごとに違っていて、どこからこの材料が入って、どのように進んで動物や人の形になったのかなと機械のラインを見ていくのが、迷路のようで楽しく感じます。子どもって迷路が好きですよね。いろんな部品があって 組み合わさっているところが、等間隔であったり、ときには非対称であったりと、そのバランスも絶妙のように思いました。とっても細かくて精密な機械です。
くじゃくの機械では、くじゃく専用なのかアーチ状の形になっています。キリン工場では歯車がいくつも重なっていて、動いているところを見てみたくなります。
また、機械を動かして作業しているロボットのような人たちもところどころにいて、ちょこんと覗いているようなときもあり、足がにゅーんと伸びているときもあり、いろんな姿があって可愛らしく思いました。
工場の機械は黒色で、材料や出来上がった動物たちには色がついています。その色使いの対比も素敵で、材料や出来上がった動物たちの色が可愛らしいです。機械が黒い分、材料などが引き立っているように感じました。
●ぼく、私は何からできているのかな、何が好きなんだろう、と好きなことに対するイメージが膨らみます。想像力が大きく広がる、楽しみがいっぱい詰まった絵本です!
お話に出てくる「ぼく」は、きっと「ぼく」が好きなものから「ぼく」が作られているんでしょうね。64人の子どもたちが描かれているページがありましたが、この64人の子どもたちの「つくりかた」も、64通りあるのかなと思いました。好きなものの組み合わせも64通り。全部が全く一緒の子はきっといませんね。
「ぼくのつくりかた」というタイトルの絵本ですが、ぼく、わたしは何からつくられているのかな、という視点から、自分の好きなものはなにかな、という考えに自然と向けさせてくれる作品なのでは、と思いました。楽しい気持ちで好きなものを考え、その好きなものが好きという自分も好きになっていく、という自己肯定感も高めてくれるように感じました。
長男もこの絵本を読んで、「ぼくは何から作られているのかな~」と考えていました。自然とそういった想像力に働きかけてくれる楽しい絵本のように思います。
切り絵の奥深さと、自分は何から作られているかな、この動物は?大好きなお友達は…?といった新たな視点を芽生えさせてくれる、深い内容の絵本のようにも感じました。