10ぴきのかえるのおつきみ
秋のお月見シーズンはもちろん、月がキレイだなって感じる夜ならいつの季節にもにピッタリ!お団子を食べながら美しい月を眺めませんか?
☆3つのおすすめポイント
- 「十五夜って何かな?」「お月見って何をするのかな?」ひょうたん沼の仲間がみんなでお月見を楽しみます。どんなことをする”秋のお楽しみ”なのか、覗いてみましょう!
- 10匹のカエルにとって大ピンチが待っています。みんなで協力して切り抜けられるかな?無事にひょうたん沼にもどれるのでしょうか。
- ヨレヨレになってしまったススキ。だけど、年寄りガエルは「誠に素敵なススキじゃよ!」と、10ぴきのカエルに伝えました。どうしてそんな事を言ったのかな?その意味とは。
☆あらすじ
夏が過ぎ、そろりそろりと秋がきて、今夜の明るい月の夜です。ひょうたん沼に住んでいる10ぴきのカエルは、夜空を見上げて「月がずいぶん丸くなったね、この前はバナナみたいに細かったのにね。」と話しています。そこに沼一番の年寄りカエルがやってきて、「もうすぐ満月。十五夜じゃなあ。お月見が待ち遠しいわい」と言いました。お月見は秋のお楽しみで、ススキを飾って、お月様にお団子をお供えして、お客様も招待して、みんなでお団子をいただくそうです。「お月見ってたのしそーう!!」
次の日、10ぴきはお月見に招待人に向けて招待状を作り、赤とんぼさん達にそれぞれ届けてもらいました。
そして、いよいよ満月の夜の日がきました。10ぴきはススキをとりに、ちょうちょに教えてもらい、ススキ野原へ出かけました。途中からはバッタが道案内してくれます。どこにあるかな、ぴょんぴょんぴょん!野原がススキでいっぱいのススキ野原。採れたススキをみんなでかついで「ワッショイ!ワッショイ!おっと危ない!木の根っこが・・・」一番前にいた”まちがえる”が、草むらからニョロンと伸びていた物を踏んでしまいました。すると・・・『よくも昼寝の邪魔をしてくれたなー!!!』とヘビが怒って追いかけてきます。『まてーっ!!』10ぴきは必至で逃げますが、”ふりかえる”が捕まり飲み込まれそうになりました。”ふりかえる”は飲み込まれまいと必死でススキにしがみつきます。他の9匹も必死でそのススキを引っ張り助けようとしています。すると、ヘビの顔にススキの穂にが当たり、くすぐられたヘビが思わず『はっくしょーーーん‼』と大きなくしゃみをひとつ ”ふりかえる”は勢いよく吐き出され、他の9ひきも空中に吹き飛ばされました。
命からがらひょうたん沼へ帰ると、気づけばススキはヨレヨレに・・・。
だけど訳を聞いた年寄りガエルは言いました。「どんなにヨレヨレになっても、これは誠に素敵はススキじゃよ!ごくろうさま。ごくろうさま。」
一休みした10ぴきのカエルはお月見団子を丸めます。100個200個300個。沢山出来ました。そこへお月見のお客様がやってきました。手土産は秋の草花・草の実・木の実。
やがて夜空に十五夜のまん丸お月様がほっかり輝いて、明るくなりました。ひょうたん沼のお月見は夜更けまで、賑やかに続いたということです。
☆際立った特徴
個性的な10匹のカエルが登場します。秋のお楽しみのお月見を楽しむために、今回その10匹が力を合わせてお手伝いすることは、「お月見のススキを採りに行くこと」でした。楽しく採りに行ったのに、大ピンチがススキ野原で起こってしまいます。カエルの命にも関わる大事件。どうやってそのピンチを切り抜けたのかな?
お月見って何かな?とまだ知らないお子さんと、一緒にお月見の楽しさを知ったり、秋の夜の美しさを感じる事も出来ます。そして、秋らしい虫・花・草にも出会える絵本なので、探して見てください。きっと沢山の秋を感じられます。
☆書店員の感想
「十五夜って何かな?」「お月見って何をするのかな?」ひょうたん沼の仲間がみんなでお月見を楽しみます。どんなことをする”秋のお楽しみ”なのか、覗いてみましょう!
10ぴきのカエルにとって初めての「お月見」です。お客様を呼んで、ススキを飾って、お団子をお供えして、お客様をお招きして、みんなでお団子をいただくのだと、年寄りガエルから聞いた10ぴきの心の中は、きっと「お祭りみたいで楽しそう!早くお月見やってみたい!」という気分だったでしょうね。なぜそんな事をするのかという理由よりも、なんだか楽しそう!と思ったのではないでしょうか。
小さなお子さんにお月見の理由を教えることは、少し難しいかもしれませんね。私も3歳の娘にしっかりと”お月見の意味”を教える事はしていません。しかし、大きな月を見上げながら「キレイだね」「お月様大きいね」と話しているだけで、自然の美しさに感謝する気持ちを持ってくれているように感じます。小さなうちは、それだけで十分のように私は思います。本書の年寄りカエルもきっと私と同じ気持ちで、10ぴきのカエルに”お月見”について話したのかなと思いました。
10匹のカエルにとって大ピンチが待っています。みんなで協力して助けてあげられるかな?そしてピンチを切り抜けてヨレヨレで持ち帰ったススキ。だけど、年寄りガエルは「誠に素敵なススキじゃよ!」と、10ぴきのカエルに伝えました。どうしてそんな事を言ったのかな?その真意は?
採ったススキを運んでいると先頭の”まちがえる”が、大きなヘビのしっぽを踏んでしまいました。逃げた10ぴきでしたが、最後尾の”ふりかえる”が捕まって飲み込まれそうになっています。必死にススキにしがみつき、”ふりかえる”を助けようと他のカエル達がススキを引っ張って、ススキにくすぐられてヘビがくしゃみをして、その勢いで口から出た”ふりかえる”は助かりました。ススキはお月見の大切な飾りなのに、ヨレヨレにしてしまった事を、10ぴきのカエルは申し訳ない気持ちで帰りました。しかし、その一件を聞いた年寄りカエルは「誠に素敵なススキじゃよ!ごくろうさま。」と優しく伝えました。
年寄りガエルはおそらく、『みんなで”ふりかえる”を助けるために必死に引っ張ったからヨレヨレになった。ススキもカエル達をきっと守ってくれたんだ。ススキはカエル達が仲間を守り救った勲章のようなもの。』と言いたかったのではないでしょうか。
そして、ヨレヨレになったススキは大切に飾り他の花や草と共にお月見を彩ってくれました。きっと10ぴきのカエルは、十五夜へ感謝し、ススキにも感謝したことでしょうね。
- 作品名:10ぴきのかえるのおつきみ
- 著者名:作 間所ひさこ 絵 仲川道子
- 出版社:PHP研究所