おもちのおふろ
寒い日に、お風呂屋さんで温まりませんか!?お餅のもーちゃんとちーちゃんが、いろんなお風呂を体験していきます。一番良かったお風呂はどれかな?ちょっと寒くなってきた季節にもピッタリ!お風呂も、温かい食べ物も恋しくなるお話です。
☆3つのおすすめポイント
- 食べ物がお風呂に入っている姿が可愛らしくて、美味しそう!いろんな種類のお風呂に入って、いろんな出来事に遭遇してしまう”もーちゃん”と”ちーちゃん”ですが、お風呂屋さんを堪能します。
- 絵が可愛くて、隅々まで面白いです。こんな古き良き銭湯で、ほのぼのお風呂に入りたいな、そう思えてくる楽しい要素が詰まっています。
- どのお風呂も、とてもいいにおいが漂ってきそうです!食べ物たちや、お餅のふたりも、本当の人間のように見えてきて、とても愛らしいキャラクターたちがいっぱいです。寒くなってきた季節におすすめです。
☆あらすじ
とっても寒い日。お餅のもーちゃんとちーちゃんは、お風呂屋さんに出かけました。
「ぽかぽかの湯」というお風呂屋さんに来ました。
二人は暖簾をくぐり、下駄箱に下駄を入れます。
銭湯の番台には、お風呂が大好きな、まっしろなダイコンさんが座っています。
二人は、着物を脱いでかごに入れました。
ワクワクしながら浴室の扉をあけると…
まずは、「醤油の足湯」です。いろんなお寿司さんが、たくさん並んで足をつけています。
しかし、お寿司さんたちは気持ちが良いのか、だれも動きません。
もーちゃんが、「だれか変わってくれませんか」と声をかけますが、だれも聞いてはいませんでした。
仕方がないので、次のお風呂に行くことにしました。
次のお風呂は「きなこの砂風呂」です。
もーちゃんと、ちーちゃんは、きなこにもぐり温まります。
しかしそこへ、ちっちゃなお団子たちがたくさんやってきました。お団子たちは、きなこの上を、ころころ転がって…。
きなこがお団子にくっついて、なんと全部なくなってしまいました。
砂風呂の砂がなくなってしまい、二人は寒くてたまりません!
そこで、体を温めるべく「トースターのサウナ」へやってきました。
そこでは、いろんなパンたちが、ぎゅうぎゅうに入って温まっています。
二人は、そのすみっこに、そーっと座りました。
温かいトースターの中、すぐに、ぽかぽかとしてきました。
しかし、しばらくすると、
どんどん熱くなって、体もほてってきました。
もーちゃんとちーちゃんは、熱さで大きく大きく膨らんでしまっています!!
パンたちも大騒ぎ!トースターの中は、ますますぎゅうぎゅうです。
もーちゃんとちーちゃんは、トースターサウナから出ることにしました。
ところが、ちーちゃんのふくらんだ部分が、しょくパンさんにくっついてしまい、早く離れてくれよ、としょくパンさんは怒っています。
そこで、トースターから出て、みんなでちーちゃんを引っ張ることにしました。
うーん、うーん、と引っ張ると…
ぷっちん!と無事にとることができました!びっくりしましたね。
最後にもう一つのお風呂に入ります。
ここは「おなべのお風呂」です。魚介や野菜、しらたきなど大きなお鍋型のお風呂に入って温まっています。もーちゃんとちーちゃんも、一緒に入ってゆっくり温まり、お風呂を楽しみました。
「お風呂、最高!」
☆際立った特徴
おもちの「もーちゃん」、「ちーちゃん」、名前がまず可愛らしいですね。そんな二人が、お風呂屋さんに行きました。いろんな種類のお風呂があって、どこも混雑していて、可愛いような美味しそうなようなお風呂で温まりながら、いろんなハプニングに出会っていくお話です。
お風呂が楽しくなるような、こんなお風呂あったらいいな、と思える愉快な世界です。
おもちの二人は、ゆっくりお風呂を楽しめたかな。お風呂屋さんってどんなところだろう?いろいろ想像が膨らみ、お話が楽しめます。
絵本の大きさは24.1㎝×21.6㎝で、大人の両手を広げて並べたくらいの大きさです。
☆書店員の感想
●食べ物がお風呂に入っている姿が可愛らしくて、美味しそう!いろんな種類のお風呂に入って、いろんな出来事に遭遇してしまうもーちゃんとちーちゃんですが、お風呂屋さんを堪能します。
もちの「も」の「もーちゃん」、「ち」の「ちーちゃん」。二人合わせて「もち」ですね。二人が並んでお風呂屋さんに向かうときに持っている洗い桶にそれぞれの名前が書かれていて、左側にもーちゃんがいて、右側にちーちゃんがいるので、二人並んで「もち」となっています。四角い形のおもちが二人の全身の形なのですが、ちょっと縦長のかたちで、身長がちーちゃんより大きいもーちゃん、横に長めのちーちゃんが、仲良くお話しながら歩いてお風呂屋さんにやってきました。
「ぽかぽかのゆ」というお風呂屋さんに到着しました。
お風呂屋さんに入ると、野菜や魚介類などいろんな食べ物たちが脱衣したり、髪(葉っぱ?)を乾かしたり、それぞれに過ごしています。入浴料も食べ物によって違い、もちの二人は二番目に安くて10円。一番高いのは寿司で100円です。一番安いのは団子の5円で、その値段の違いが気になります。
ふたりはまず、「しょうゆの足湯」に入ることにしました。とっても香ばしい香りがしてきそうです。たくさんのお寿司が自ら醤油に足をつけていて、そのまま食べると美味しそうだな、と思ってしまいました。(笑)かっぱ巻きや鉄火巻き、タコにエビ、いくらのお寿司もいます。サンマ?イワシ?でしょうか、光物のネタをのせたおばあちゃんのお寿司も歩いていて、年齢層もさまざまです。
もーちゃんとちーちゃんは、お寿司たちがたくさんいて座るところがなく、足湯に入ることができませんでした。
仕方なく砂風呂に行きますが、扉を開けると黄色のきな粉がキラキラと光っていて、二人は感動します。おもちときな粉、相性も抜群ですね。
砂風呂に入りますが、ほどなくして団子たちがたくさん来てきな粉の上を転がり始め、あっという間にきな粉はなくなってしまいました。なかなかゆっくりお風呂に入れない二人は残念そうです。団子はきな粉が全身にまぶされ、美味しそうになりました。
二人はぶるぶる震えながら「トースターサウナ」へ向かいました。トースターの横についている窓からは、パンがぎっしり中に詰まり、みんな気持ちよさそうに温まっている姿が見えます。ここもきっと香ばしそうな匂いがしているのでしょうね。想像しただけでお腹が空いてきそうです。
トースターに「長く入りすぎないようにしましょう」という注意書きもありますね。トースターの中はやはり熱いようです。お餅の二人は、トースターの熱で膨れ上がってしまいました。パンがたくさんいたトースターの中は、ぎゅうぎゅう!もーちゃんとちーちゃんのふくれた頭に挟まったパンもいて、みんな困り顔です。ちーちゃんのお餅が食パンさんについてしまいましたが、なんとか取ることができました。
ここのサウナでもゆっくりできなかった二人。最後の望みをかけて、「おなべのお風呂」に向かいます。その名も、「寄せ鍋の湯」です。みんなゆったり、気持ちよさそうに入っています。二人もゆっくり入ることができ、ぽかぽかになりました。このページのイラストを見ると、普段寄せ鍋に入っている食べ物たちは、みんなでゆったりお風呂に入っている気分でお鍋に入っているのかな、とそんな想像が膨らみました。お鍋をしたときはこの「寄せ鍋の湯」のページの絵が思い浮かんできそうです。
ハプニングもありましたが、いろんなお風呂を楽しんだもーちゃんとちーちゃん。寒い季節ですが、体も心もぽかぽかと温まったように思いました。
●絵が可愛くて、隅々まで面白いです。こんな古き良き銭湯でほのぼのお風呂に入りたいな、そう思えてくる楽しい要素が詰まっています。
二人がやってきた「ぽかぽかのゆ」。建物が描かれているシーンがありますが、昔よく町中にあった古き良き銭湯、といった佇まいです。レトロな感じがして素敵に思います。
また、もーちゃんとちーちゃんは、防寒のためにどてらを着てマフラーを巻いています。そして、どてらの下は着物で、履いているものは下駄、水玉とストライプ柄の靴下がオシャレです。服装からも昭和な雰囲気を感じますが、素敵な雰囲気です。
お風呂屋さんの中も、とっても昭和な感じを漂わせています。
玄関はアルミ板のカギ、お風呂屋さんの受付…ではなく、番台さんがいます。昔ながらのマッサージ器や、「おかまドライヤー」で頭を乾かしているブロッコリーの奥さんもいます。体重計も、アナログ時計のような表示で、立った大人の目線より少し下の位置についている体重計です。私も小さいときにそういう体重計で測った記憶があり、なんとなく懐かしく感じます。表示が少し高い位置についているので、誰かに見られないか、ちょっとドキドキしてしまいますね…!(笑)
また、番台さんのだいこんさんが読んでいる「野菜新聞」に、「野菜村の村長さん決まる」と書かれています。学研プラスホームページの、この「おもちのおふろ」の絵本紹介ページに書かれていたのですが、この村長さんに決まったのは「畑野春菊さん」で、最後の寄せ鍋の湯のページの真ん中のほうで背中を洗っているのがその方だそうです。ぜひ探してみてくださいね。食べ物たちの楽しい生活の世界がこのお話に広がっています。
そして、「トースターサウナ」も黄緑色のトースターで、これまたレトロな雰囲気を醸し出しています。いまの家電製品でカラフルなものって少ないように思うので、現代でも逆にオシャレにうつるかもしれませんね。けれど、中で温まっているパンたちは時代に関係なくみんなに愛される、美味しそうなパンたちがいっぱい!パン好きにとってはたまらない光景です。
また、「寄せ鍋の湯」の浴室では、入って正面から見える壁に、バーン!と立派な山の絵が描かれています。富士山でしょうか。その下に浴槽があって、立派な山を眺めながら入っているような気分になれますね。これも、昔からの銭湯には定番として絵が描かれているような印象があります。洗い場もタイルが敷き詰められ、横並びの洗い場、壁に固定されているシャワーがあったりと昭和の銭湯の雰囲気を感じさせます。きっとおじいちゃんやおばあちゃん世代の方が見たら、とっても懐かしい光景なのかもしれないな、と思いました。私も、こんな立派な山の絵が描かれている銭湯に入ったことがないので、一度入ってみたいと思いました。
お子さんから見ても、きっといまよく行かれるような「スーパー銭湯」等と雰囲気がガラリと違っているように思います。現代のお風呂屋さんを知る子たちから見たら、この「ぽかぽかのゆ」のお風呂屋さんは、新鮮な光景として映るかもしれませんね。昔のお風呂屋さんはこうだったんだよ、と話すきっかけになりそうです。いろんなお風呂話をするのも楽しそうだなと思いました。
また、この素敵なお風呂屋さんにはモデルとなったお風呂屋さんがあって、江戸東京たてもの園の「子宝の湯」というところがモデルとなっているのですね。「宮造り」のお寺のような銭湯で、東京近郊に多い銭湯のつくりだそうです。本当に趣がありますね。これも「おもちのおふろ」紹介ページに書かれていましたので、気になった方はぜひチェックしてみてくださいね。
●どのお風呂もとてもいいにおいが漂ってきそうです!食べ物たちやお餅のふたりも、本当の人間のように見えてきて、とても愛らしいキャラクターたちがいっぱいです。寒くなってきた季節におすすめです。
いろんな種類、いろんな年齢の食べ物たちがお風呂に入ってきています。
赤ちゃんをあやしているトマトや、体重計に乗っている桜餅、髪をとかしているエビもいます。服を脱いでいるネギもいて、ネギの服はどんな服だろう?と興味が湧きます。
番台に座っている大根さんも、眼鏡をかけて新聞を読み、初老な雰囲気です。落ちつた様子で、銭湯の味がまたさらに引き出されているように思いました。
醤油の足湯や、きな粉の砂風呂など、いい香りと美味しそうなようすが伝わってきて、食べ物たちも美味しく味付けされるようなお風呂に、気持ち良さが増すのかなと思いました。けれど、団子たちが来るたびに、きな粉の砂風呂は砂を追加しないいけないですね。お風呂で汚れを落とすどころか、全身に黄粉を付けて帰っていくのかな…!?と気になりました。(笑)けれど、お団子たちもみんなニコニコ可愛らしく、にくめない存在です。
パンたちも、パンによって個性があるように感じます。マイペースそうなあんぱんや、オシャレが好きそうなメロンパン、クリームパンの親子に、おとなしそうなマフィン…。ほかの食べ物たちもそうですが、いろんな食べ物がいてそれぞれに個性がある、みんな仲良く過ごしていい味が出る…。そんなふうにも感じました。寄せ鍋の湯なんて、いいお出汁が出ていそうですもんね。(笑)
もちろん、もーちゃんとちーちゃんも同じおもちですが違いますね。どちらも可愛らしいです。最後に、扇風機の風にあたりながら風呂上がりの牛乳を楽しむもーちゃん、マッサージ器でくつろぐちーちゃんが描かれています。
いろいろありましたが、ゆったりと温まり、良いひとときを過ごせた二人ですね。ほのぼのとしていて読んでいる人の心も温めてくれる絵本のように思いました。
これから寒くなってくる季節にもピッタリの、ユニークなお風呂の絵本です。