きつね、きつね、きつねがとおる
怪奇を見てみたい大人にも子供にもピッタリ!海外の方にもオススメ!狐火って知ってる?”和の美しさ”をぜひご覧あれ!
☆際立った特徴
- 背の高い大人に憧れている女の子。
- 背の低い子どもだから見えない景色がある。
- 子どもにしか見えない物がある・・・?子供には不思議な力があるのかも。
- ユーモアもあるけど怖さもちょっぴり。人間のすぐそばに怪奇な世界があるとしたら・・・。
- 「狐火」「狐の嫁入り」が、現代社会の中に描かれる。
- 大人も子どもも、安心して覗ける怪奇な世界。(脅かしたり怖がらせる内容ではない)
- 第17回日本絵本賞
☆読み聞かせのポイント
- 私は読み終わった後、もし不思議な物が見えたら、お母さんにも教えてね!って言ってしまいました。大人だって本当は見てみたい!!ふしぎな世界はもしかすると私達のすぐ側にあるのかもしれないね。
- 「狐火」ってなに?「何でキツネが花嫁さんになってるの?」ときっと子ども達も不思議に思う光景が描かれています。キツネは「お稲荷さん」が有名ですが、ぜひ気になったら一緒に調べても楽しいですね。きっとお子さんの世界が広がることでしょう!
☆あらすじ
七五三に行った時も、街で買い物している時も、近所を散歩している時も、お祭りを見に行っても、背の低い私には見えない物ばかり。
「ねえ、私も肩車してよ」
レストランで料理をしているコックさんの作っている姿を見たいのに、背が届かなくて見えないよ。早く大きくなりたいな。
レストランを出たら外は真っ暗。
レストランから「歩いて帰ろう」ってお父さん。でも暗いしおばけが出そうで怖いな…。
河川敷を歩いていると、向こうから何かが光って近づいてくる。
あれは何?橋の上のライトが川に反射して見えているの?
「もしかしてきつね火かもね・・・ふふふっ」ってお父さん。
きつね火って何??と思ったら、もう目の前にあの光が来ている。
ホントだ!
女の子が思った時には、キツネたちの結婚式の行列が私達の横を通り過ぎて行った。キレイな花嫁さん。そして最後尾にはキツネの大道芸もいる。
でも、まだお父さんもお母さんもキツネたちに気付いていない。
気付いたのは私と弟だけ。
次はキツネのコックさん達。そしてキツネのお祭りの列が次々と私達の横を通り過ぎて行った。
とってもキレイ・・・。どうしてお父さんもお母さんも何も言わずに通り過ぎていくの?
弟は怖がって泣いてお父さんにしがみついている。
そうか!お父さんにもお母さんにも、あの灯りが全く見えないんだ。
タクシーに乗って家まで帰る事になった。
あーつまんない。もっと見ていたかったな。でも、またどこかで会えるよね。
またね!

☆書店員の感想
キツネといえば「お稲荷さん」が有名ですが、神様ではなく狛犬などと同じで、神様をお使いする霊獣だそうですね。
一方で、「きつねのよめいり」を見たら不幸になるとか、狐火は怪奇な現象の一つと、聞いたことがあります。どちらも私は見た事が無いので耳にするだけなのですが、なぜか「この言葉=怪奇=怖い」と決めつけてしまっている部分があります。
でもよく調べてみると、「狐の嫁入り」はキツネたちにとって嫁入り姿を人間に見られてはいけないとルールがあって、見られないために偽物の雨(日照りに降る突然の雨)を降らたんだとか。「狐火」もそんな日照りの雨の異様さを例えた表現だとか。
面白いですね!
現代では化学的に解明されている「狐火」も昔の人はそんな風に考えていたんですね。そしてキツネの中にもルールがあるとか。怪奇なお話ってなんて面白いのでしょう!!不思議な事は怖いから現実に見たくはないけど、絵本の中でなら見てみたくありませんんか?
でも、大人の皆さんも、怖いのが苦手な子ども達も、覗いてみたいですよね。
主人公の少女と弟君には見えるそうですよ。さあ、少女と一緒に怪奇な世界をそっと楽しみましょう!脅かしたり怖がらせる絵本ではないので安心して下さいね!
●子どもだから背が足りなくて見えない物があるかもしれないけれど、純粋な心の持ち主である子どもにしか見えない物があるとしたら・・・?背が低いからこそキツネたちが目の前に見える。
さて、主人公の女の子。弟と七五三の写真を撮る姿が描かれています。おそらく7歳のお姉ちゃんで、弟は5歳ですかね。7歳頃の子と言えば、少し怪奇現象のような怖い事にも興味を持ち始める年頃ですね。
7歳頃の女の子です。もちろん背が低くて、何か楽しそうなことがあっても、大勢の人がいたり、ブロック塀が邪魔で見えない事が多い様子です。
それでいて、自分より小さな弟がいれば、両親に抱っこや肩車をしてもらおうと思っても”いつも”という訳にもいきません。どうしても下の子が優先・・・。上の子の悲しい定めですかね。
女の子は自分でグッとつま先立ちをして頑張る時もあるし、しゃがんで下から見てみようと工夫する時もあります。
それでも見たいものが見えない事も多いようです。そんな時はきっと、もう少し背が高ければ。早く大きくなりたいなと思っているでしょうね。
さて、ある夜の事です。家族で夕食を食べにレストランへ行った帰り道、みんなで歩いて家にむかうのですが、少女は不思議な灯りを見つけます。遠くで無数にフワフワと光っています。なんだろう?と思ったのは女の子と弟だけ。両親は気がついていません。
どうして?
家族の横を通り過ぎて行ったのは、なんとキツネの結婚式の行列。そしてその周りを囲うようにゆらゆら揺れる狐火です。小さな弟は怯えて母親の足にしがみつきます。両親はと言うと、何やら楽し気に会話しています。キツネの行列が真横を通ったのに、ですよ!
そうです。これはきっと大人には見えない怪奇現象なのでしょう。
その後も、どう見ても普通じゃない事が続きます。
キツネの神主達が牛舎や馬をひいて横を通っていきます。どうやらお祭りの行列のようです。普段背が低い女の子には見えない事が多い美しい結婚式の様子やお祭りなどが今日は見放題です!だって、自分の目の高さで繰り広げられているのですから。
女の子はこの素敵な行列に興味津々&美しさに感動さえしています。
しかし、あまりの怖さに弟の方は大パニックで、泣いています。5歳ですから怖がるのも仕方がありません。女の子はまだ見ていたいなーと思いながら母親の手を引っ張るのですが、泣いている弟がどうしても優先です。「大丈夫大丈夫。」と弟の頭を撫でるお母さんと、「早く帰ろう帰ろう!」と抱き上げるお父さん。
女の子が可愛そうに思えます。もっと話を聞いてあげればいいのに。
でも、それは仕方がありません・・・。だって両親には見えていないのだから。

●女の子にとって、嬉しい出来事が起こります。
あまりに泣く弟。歩いて帰りたかったけど、たまたま橋の上でタクシーが通りかかり、乗って帰る事にしました。タクシーに乗り込んだ家族。女の子はもっと見ていたかったのに…。と悲しそうです。しかし、ここで女の子にとって、嬉しい出来事が起こります。
橋の欄干に、今まで行列に参加していただろう1匹のキツネが狐火を灯しながら、ヒョイッと女の子の前に戻って来てくれたのです。
まるでキツネが、女の子に「またおいで」と言っているようにも見えるラストシーンです。
また会いたいな。とタクシーの中から手を振る女の子。「きっとまた会えるよ!」と、声を掛けたくなるようなシーンでした。
私には見えていて、子ども達には見えている物があるとするなら・・・羨ましすぎる!私もキツネの結婚式やお祭りを見てみたいです!
本書を読んだ後、「もし何か不思議な物を見たら、絶対お母さんにも教えてね!!」と娘にお願いしましたよ。
大人だから見える景色があるように、もしも子どもにしか見えない景色があるとするなら、私は何とか見る方法を探したい・・・しかし、逆に見えない事があるのもとっても素敵な事で、摩訶不思議で、とっても夢がある事だと思いました★
- 作品名:きつね、きつね、きつねがとおる
- 著者名:作 伊藤遊 絵 岡本順
- 出版社:ポプラ社