ぎょうれつのできるパンやさん

本書を読んだ後はきっとパンが食べたくなる!!甘くて香ばしい香りが読者にも伝わり、優しい動物達にも会いたくなる絵本です。

☆際立った特徴

  • ぎょうれつのできるおいしいえほんシリーズ、他6巻
  • 水彩色鉛筆で描かれる温かみのある色彩。
  • 美味しそうなパンが沢山登場。
  • 人間と動物が共存し、仲良く暮らしている世界観が、ほのぼのと優しい気持ちにさせる。
  • カバーにパンのレシピ付き「ニワトリさんのたまごぱん」

★これまでにシリーズ中の「ぎょうれつのできるすうぷやさん」

「ぎょうれつのできるはちみつやさん」「ぎょうれつのできるケーキやさん」も紹介しています。

☆読み聞かせのポイント

  • 美味しそうなパンが沢山登場しますので、お子さんと「このパン美味しそうだね。」などと一緒に楽しみ、ぜひ「パン食べたくなるね」など、話を膨らませてください。
  • 「ぎょうれつのできるおいしいえほんシリーズ」に登場したキャラクター達が本書にも描かれています。シリーズを見ている方には楽しいサプライスです。ぜひ探してみてください。まだシリーズを見たことがない方も、ぜひ他のシリーズを手にとって見比べてみてください!
  • 様々な動物が登場します。名前を知っているかな?「この動物の名前は何?」と聞いてあげるのも楽しい読み方の一つです!

☆あらすじ

ぐうぐう山にオープンしたパン屋さん。店長のふっくらおじさんが、今日も美味しいパンを作ります。

しかしこのお店は人里離れた場所に建っている為、お客さんはやってきません。

おじさんが悩んでいると、美味しそうな匂いに誘われた「ぐうぐう山」の動物達がやってきました。とても美味しいパンのお礼に、山の木の実を渡しました。

噂は「ぐうぐう山」の隣の「もぐもぐ牧場」の動物達にも伝わり、牧場の動物達も食べに行く事にしました。あまりのおいしさに動物達は大満足。お礼にヤギと牛はミルクを、ニワトリは卵を渡しました。

噂は、「ぱくぱく林」の鳥達にも伝わりました。あまりに美味しいパンに大満足。お礼に木苺や山ぶどう、ひめりんごなどの木の実を摘んできて、おじさんに渡しました。

その日の夜、おじさんは小麦が残り少ない事に気がつきました。残念ながら動物達のお礼では小麦が買えないのです。

残りの小麦がなくなったら、店じまいするしかありません・・・。

次の日、パン屋さんの噂は、「ムシャムシャ村」のペットの動物達にも伝わりました。ペットたちも食べたくて仕方がありません。家から飛び出し、「ぐうぐう山」を目指して出かけてしまいました。

それを見ていた人々はビックリ仰天!ペットの動物達を追いかけて行くと・・・。

すると「ぐうぐう山」にポツンとパン屋さんがあり、その前に動物達の長蛇の列が。さらにビックリ!!

ぎょうれつのできるパンやさん 表紙

☆書店員の感想

●人里離れた場所に建てられたパン屋さん。山を越えて牧場を超えて、林も村も超えて・・・と、「美味しい!」の噂の広まり方がまさに驚き!人間ではなく動物達の力を感じさせる内容です。

本書の最初に「ふっくらパン屋さん」の現在地を示す地図が描かれています。

それを見ると、どうしてこんな人里離れた場所にパン屋さんを建ててしまったんだろう・・・とつい思ってしまう程、人里離れた場所にお店があるのに驚きます。大人ならそれはお客さんは来ないよ・・・とまず心配してしまう事でしょう。

実はその、「人里離れた場所にあるパン屋」というのが本書の最大の面白さに繋がっていくのです。

●【美味しい店】の噂は、すごいスピードで伝わっていく

本書シリーズでは、動物達は人間と上手に仲良く共存しているという設定です。そして動物達も美味しいものには目がないようです。人間にも負けない程、美食な動物達がシリーズでは魅力の一つになっています。

本書の話に戻りますが、パン屋がある「もぐもぐ山」には残念ながら人はいないようです。しかし、山奥には沢山の動物達がいます。その動物達が牧場の動物達に、牧場から林の鳥達に、鳥達が人が大勢住んでいる村のペット達にと、どんどん人が住む場所に向かって噂が広がり、届いていく様子が、読んでいてワクワクするポイントだと思いました。

先にも話しましたが、せっかく地図が描かれているので、見比べながら「今はここまできたね」と噂が広まる様子を客観視するのも面白いと思います。

●パンの甘くて香ばしい香りが、人里離れたパン屋さんから人が多い村までどんどん広がっていくのが伝わってきます。その香りはきっと読者のあなたの元まで届きます♬

「ぐうぐう山に建ったパン屋が美味しいらしい!」という言葉での噂が動物達に伝わっていくのですが、不思議なもので言葉だけでなく、パンの香ばしい香りがふわ~と風に乗って漂ってくるような雰囲気を感じさせます。そして噂を聞いただけで、頭の中に温かくふっくらしたパンを想像させます。

これはもう聞いたら食べたくて、走り出してしまった動物達の気持ちがホントによく分かるな・・・と私は思いました。

●作者ふくざわゆみこさんの魅力的な絵の世界

作者ふくざわゆみこさんの絵は、水彩絵の具で描かれているようなのですが、本当にパンを美味しそうに魅せています。【こんがり・ふっくら・あたたかい・甘い】をどのパンからも感じます。

一方で、動物達の毛並みは一本一本丁寧に生命力を感じさせるよう描かれています。表情はニッコリと笑顔で優しいのですが、毛の固さや量、色は本物のよう。

それらをまとめるのは背景の植物であり、空の色なのですが、これもまた本物のようで、ピクニックに行きたいな!なんて思ってしまうような素敵な場所を表現しています。

私は本物の動物に山や森で会うのは怖いけど、「ぐうぐうやま」なら、動物達に混ざって行列に並んでみたいなと思いました。

ぎょうれつのできるパンやさん 裏表紙
よっぴー
  • よっぴー
  • 書店員のよっぴーです。2人の男の子と、1人の女の子の母として、毎日育児奮闘中です。
    私は自分の子どもに沢山の愛情を子どもが嫌がる時が来るまで、沢山沢山注ごう。心をもしコップに例えるなら、そのコップが溢れて「もう大丈夫だよ!」となるまで続けようと思っています。それだけは大事にしている信念です。
    絵本を読むのもその一つです。
    大切にしている愛情を伝える方法の1つだと思っています。

    保育士・幼稚園教諭二種・介護福祉士です。
    他に、ベビーシッター・ベビーマッサージ・ベビー’sサインなどの資格も持っています。
    絵本の感想とともに私の育児経験、保育士・幼稚園教諭免許を持つ書店員としてのアドバイスなどをご紹介出来たらと思っています。