ごろりん ごろん ころろろろ

ユーチューブ動画で絵本専門書店員が詳しく解説しています

働き者のうさぎさんが作った大きなテーブル、運ぶの大変そうだけど大丈夫かな?テーブルと一緒に使う椅子はどうしましょう?うさぎさんと、その仲間たちとの、心温まるストーリーです。

☆3つのおすすめポイント

  1. うさぎさんが作った大きなテーブル。一生懸命運びますが、お友達の動物たちがつぎつぎ手伝ってくれて、どんどん軽くなっていきます。優しいお友達たちと、にぎやかな雰囲気が楽しそうです。
  2. テーブルを置いた後、今度は椅子を作ったうさぎさん。考えついたら居ても立っても居られないようです。みんなが喜んでくれるものをつくる、思いやりと優しさに心が温まります。
  3. 動物たちの優しい絵の描写に、風景。穏やかな雰囲気がとても伝わってきて、絵本の中でゆったりと過ごせるような感覚になってきます。

☆あらすじ

うさぎさんが大きなテーブルを作りました。みんなで使えるようにと、丸い形をしています。

テーブルをどこに置こうかと考えたうさぎさん。みんなで使うテーブルだから、みんなが集まるところがいいな…、と、くるまにのせて、引っ張って運び始めました。くるまはごろりん、ごろりん…と音を立てて進んでいきます。

頑張って引っ張っていたうさぎさんでしたが、少しくるまが軽くなりました。

なんと、お昼寝をしていたロバさんが押しはじめてくれていたのでした。くるまの音も、ごろん、ごろん、と少し軽くなりました。

うさぎさんはさらに進んでいきました。すると、またまたくるまが軽くなったようです。

今度は散歩をしていたキツネさんがうさぎさんのお手伝いをし始めてくれました。

ころん、ころん、ころん…、と、くるまを動かす音が更に軽くなっています。

そしてまた、うさぎさんはおやっと思いました。

くるまが、また少し軽くなったような気がします。

つぎは、山へ行こうとしていた、くまさんが手伝ってくれています。

そして、さらに進むと、今度はうさぎさんが地面から浮いてしまうほど、くるまが軽くなりました。くるまもころろろろ、ころろろ…、と軽快に進みます。

なんと、10匹のりすさんたちが集まって、みんなで手伝ってくれました。たくさんの動物たちと一緒に、切り株のある丘までテーブルを運ぶことができました。

その丘には、切り株が一つだけありました。それを椅子のように使い、動物たちが順番に座っていきます。みんな各々に、したいことを考えていました。

それのようすを見ていたうさぎさん。ロバが気づいたときには、うさぎさんの姿はありません。

うさぎさんは、急いで家に帰り、なにか作業を始めたようです。

次の日、動物たちがテーブルのある丘に集まってきました。だれが一番先に座ろうか、そんな相談をしながら集まっていくと…。

なんと、机の周りには丸椅子が全員分置かれているではありませんか。仕事の好きなうさぎさんが、夜じゅうかかって椅子を作ってくれていたのでした。疲れたのか眠ってしまっています。

あともう一つ、大きな切り株が残っていますので、だれかさん、もう一人座れますよ。

いろんな動物たちが集う、素敵な空間が仕上がりました。

ごろりん ごろん ころろろろ 表紙

☆際立った特徴

この絵本は1984年に出版されたロングセラーの絵本です。

働き者のうさぎさんと、それを見ていた動物たちとの心温まるやりとりが素敵な内容です。絵具で描かれたような描写で、風景もキレイで、動物たちの表情や様子もほのぼのとして優しい気持ちになってきます。大きなテーブルの木のぬくもりや、動物たちの落ち着いた色合いに、ゆったりとした時間の流れも感じます。

絵本の大きさは24㎝×21㎝です。

☆書店員の感想

●うさぎさんが作った大きなテーブル。一生懸命運びますが、友達の動物たちがつぎつぎ手伝ってくれて、どんどん軽くなっていきます。優しいお友達たちと、にぎやかな雰囲気が楽しそうです。

うさぎさんは、いろんな大きさの木の板をつなぎ合わせて、大きな丸いテーブルを作りました。形はみんなで使えるように丸いもの。角がないのでどこにでも座れますね。四角で角があると、どうしても「はじっこ」で座ることになってしまうひともいるように思います。座ったみんなが顔を見合わせられるよう、素敵な形ですね。うさぎさんの優しい気持ちがここからすでに伝わってきます。

この大きなテーブルを、うさぎさんの手作りの「くるま」にのせて、うさぎさんは一人で一生懸命運び始めました。「くるま」は「リアカー」のような形をしていて、一人で運ぶには一生懸命引っ張るしかありません。

そんなうさぎさんでしたが、進むごとにくるまがどんどん軽くなっていきました。

うさぎさんやほかの動物たちの様子を見かけた動物たちが、次々と手伝ってくれたからですね。手伝って、と伝えなくても自然と手を貸してくれる、大変そうだな、と気付いて助けてあげられる優しさを持った動物たちが素敵だなと思いました。うさぎさんの優しさも伝わっているんですね、きっと。

●テーブルを置いた後、今度は椅子を作ったうさぎさん。考えついたら居ても立っても居られないようです。みんなが喜んでくれるものをつくる思いやりと優しさに、心が温まります。

丘の上にテーブルを置いた後、切り株を椅子のようにして動物たちは順番に座っていきます。ここでも友達同士揉め合わず、列を作って順番に座っていくところが偉いですし、読んでいる子どもたちの参考にもなるように思いました。

動物たちみんな、このテーブルと切り株の椅子が気に入ったようです。その姿を見ていたうさぎさん。うさぎさんは切り株に座る順番につかずに、みんなの様子を見ていたのですね。

きっと「椅子が足りない」「みんなの分の椅子があれば、みんな一緒に座ることができる」そう考えたのかな、と思いました、とても行動力のあるうさぎさん、さっと自宅に帰って、椅子を作り始めました。

みんなが喜ぶものを作ってあげたい、そういう気持ちが強いのでしょうね。

そしてとっても器用!朝までに、背もたれのある大きめの椅子を3個、小さな丸椅子を10個完成させて、テーブルの周りに並べておきました。

スケッチブックを持ってきたロバさん、水筒を持ってきたくまさん、本を持ってきたキツネさんに、リスさんはおしゃべりが楽しみで仕方がありません!そんな動物たちが、みんな一人一つずつ椅子に座れ、一緒に思い思いのことをして楽しめるようにしてくれていたのでした。丸いテーブルを囲んでみんなで座って楽しい時間を過ごすなんて、素敵ですね。

●動物たちの優しい絵の描写に、風景。穏やかな雰囲気がとても伝わってきて、絵本の中でゆったりと過ごせるような感覚になってきます。

絵の具で描かれたような、クレヨンで描かれたような、優しい描写と温かい色合いが印象的です。テーブルと椅子の木の質感と、原っぱの草の緑、黄色・白色・赤色の小さく可愛いお花と、ちょっと色の濃さは違うけれど茶色で描かれた動物たち。ちょうちょや蜂、カエルの登場が、ちょっとした差し色のようで色の変化を楽しめる点でもあります。動物たちの視点も近くだったり、遠く離れて描かれているものもあり、いろんな角度から楽しめます。

落ちつた色合いに、この動物たちの世界に流れているゆったりとした時間を感じることができるような気もして、その雰囲気にも癒されるように感じました。

また、かわいいうさぎさんが、せっせと工具を使いテーブルを作っている絵も、かわいいけれどたくましさも感じて、どんなふうに作っているのかなと見入ってしまいます。

この絵本は1984年に発行されたのですが、私の親戚の人がその当時読んでいた絵本を長男が2歳くらいのときにもらい、当時の製本で作られた絵本だったので絵本の作りは少し違うのですが、長男はこの絵本を気に入り何度も読んでいました。さらに最近では、もうすぐ4歳になる次男がよく読んでいます。動物たちがたくさん出てきて、優しく温かさが伝わってくる絵に、自然と読みたくなる気持ちが湧いてくるのかもしれません。

世代や時代が変わっても、受け継がれていく絵本のようにも感じました。大人が読んでも癒されるように思いますし、相手を思いやる優しい心を改めて感じさせてもらったように思いました。

ごろりん ごろん ころろろろ 裏表紙
にむさん
  • にむさん
  • 現在4年生と年長の男の子、1歳の娘の育児に奮闘中です。
    兄が弟に、さらに最近では弟が妹に絵本の読み聞かせをしてくれるようになりました。子どもたちの姿から学ぶことも多い日々です。
    短大で介護の勉強をし、介護福祉士の資格を持っています。