ちっちゃくたっておっきな愛
小さなねずみと大きなキリンの愛のお話。しかけページも多く、子どもも大人も楽しく幸せな気持ちにさせてくれる一冊です!
☆際立った特徴
- 縦長の絵本 30㎝×17cm
- 表紙に透明なカバー付き。厚紙を二枚折にしている。
- 途中9枚のページが段になるように少しずつ短くカットされていく。
- キリンが飛び出すように細工してあるページあり。
- 縦長を活かしたしかけと、ダイナミックな描き方。
- 水彩絵の具の柔らかくて温かみのある色合い。
☆読み聞かせのポイント
- 段になっている前半のしかけは小さなお子さんにも、めくりやすいと思います。やや厚めの紙で出来ていますが、厚紙とは違うので、強く引っ張らないように気を付けると良いと思います!
- 愛情の表現には様々な形があるなと感じると思います。ラストの二人が抱き合うシーンでは「大好きなんだね」「幸せそうだね」と二人の幸せを喜ぶような会話を子ども達としたいものですね。
- お互いに思いやる気持ちがあれば、見た目や体格差は関係ないのだと思わせてくれる作品だと思います。それは人間だって一緒。そんな話をするきっかけにもオススメです。
☆あらすじ
ぼくは、ねずみのちびちびくん。
僕の大好きな子は、グーンと上の方にいるよ。
僕の大好きな気持ちを、あの子に届けたいな。
指抜きの上にマッチ箱、その上にスイカ、その上にコーヒーカップ、その上にまんまるのキャベツを乗せて、登ってみるけどまだまだあの子に届きそうにないな。
さらにロウソクを乗せて、目覚まし時計を乗せて、カップケーキ、最後は竹馬を乗せて・・・。僕は小さいから、つま先立ちをすれば大丈夫かな?
と、その一番上に登ってグーンと背伸びをすると・・・。
ぐらっ!ぐらっ!と大きく揺れだした。あぶない!ガシャーン!!
ああ、失敗。
だけどそんなちびちびくんの頑張る姿を見ていたのが、キリンののびのびちゃん。
のびのびちゃんは体をかがめて・・・。
ちびちびちゃんは下の方。のびのびちゃんは上の方。
だけど二人は、これからもずっと、大丈夫。
☆書店員の感想
●体格の全く違うねずみ君ときりんちゃんの愛のお話。二人だからこその愛し合い方・想い合い方が優しい目線で描かれている。
本書の前半部分では、ねずみのちびちび君のみが描かれ、「ぼくには大好きな子がいるんだよ」「その子は、ずっと上の方にいるんだよ」と嬉しそうな表情で読者に語りかけます。読者の心は「そうなんだ。大好きな子がいるんだね。」と温かい気持ちになります。が、一方で、相手が誰なのかは謎のまま・・・。物語が進んでいきます。
さあ、「ずっとうえにいる」とはどういう意味なのでしょうね。
●段になっている仕掛けが楽しい!ネズミのコミカルな動きと、大変な苦労がミックスされている半面、「全てはのびのびちゃんに会う為だー!」と嬉しそうな様子が伝わる。
ちびちび君は、相手の子に会うために努力をします。指抜き・マッチ箱・スイカにティーカップに大きなキャベツ・・・どんどん重ねて、その上に立ちます。
それでもまだまだ届きそうにないからと、ウィンナーに時計、カップケーキに竹馬をさらに積み重ねていくのです。なんて健気なちびちび君でしょう。
読者はきっとちびちび君を応援したくなります。
実はこの、その運んでは積み重ねる工程を、9枚のしかけページにしています。ページ自体が階段状になるように、長さを3㎝~5㎝程ずつ短くカットしています。
なんて楽しいしかけなんでしょう!ちびちび君のコミカルで一生懸命な姿が可愛らしく描かれています。
小さな体のねずみのちびちび君です。自分より大きなものを運んで、自分よりぐーんと高く積み上げて、登って・・・と頑張るのです。そんな姿を見ていたのが・・・大好きなあの子でした。
●キリンののびのびちゃんがぐっと体をかがめるシーンが、なんだかとってもロマンチックです☆
私はラストのシーンが大好きです。
前半はちびちび君の目線だけをフォーカスして描いていましたが、後半では、キリンののびのびちゃんの目線が主になって描かれています。(目線が急にガラッと変わりつつ、まったく不自然さを感じさせません。)
ちびちび君の頑張りを見ていたのびのびちゃん。こんなにも自分に会いたいからと一生懸命なちびちびくんの姿が、のびのびちゃんの心を温かく、愛情に満ちた気持ちにさせたのだろうと思いました。
その後、のびのびちゃんは体をぐっとかがめて、小さな小さなちびちび君の側に顔を寄せます。そして私もちびちび君が大好きだよと伝えるのです。
二人の愛情に満ちたラストページは見ものです!二人の笑顔が、読者をきっと幸せにせにしてくれます☆