てぶくろ
冬の読み聞かせにピッタリ!現実にありそうなのに、しっかりファンタジー★境界線があやふやな所がとっても楽しいお話。
☆際立った特徴
- 落とされた大人物の片方の手袋が舞台。
- 中に入って温まりたい動物が次々と。
- 増えるごとに手袋の形が変わっていく。
- まさか!の動物まで入ったはずなのに・・・!とおどろく展開。
- ファンタジーの世界から、急に現実に引き戻されるラストの面白さ。
- ウクライナ民話
- 日本では1965年発行 300万部のベストセラー
- 「英日CD付 英語絵本 てぶくろ THE MITTEN」バージョンあり
☆読み聞かせのポイント
- どんどん増えていく動物達。てぶくろが一体どう変化していくのか、親子でハラハラドキドキ楽しもう!
- もし君が手袋を落としたら、その手袋ではどんな事が起こっているのかな?想像を膨らませ、広がると更に楽しい絵本。
- KUMONがうた・読み聞かせを応援【ミーテ】「冬に読みたいウクライナの昔話」
☆あらすじ
雪のある日、子犬を散歩していたおじいさん。雪道で片方の手袋を落としました。
そこへ”食いしん坊ネズミ”が駆けてきて、温かそうな手袋に飛び込みました。
するとそこへ”ピョンピョンカエルがやって来て、私も入れてと言ってきました。
「どうぞ」
2匹が入っている手袋に”早足ウサギ”が走って来て、僕も入れてと言いました。
「どうぞ」
3匹入っている手袋に”おしゃれギツネ”がやってきて、私も入れてと言いました。
もうこれで手袋の中には4匹。
そこへ”はいいろおおかみ”がやって来て、俺も入れてくれと言いました。
「まあ大丈夫かな・・・どうぞ」
いよいよ手袋の中は5匹になりました。
そこへ”きばもちイノシシ”がやってきて、私も入れてくれ!と言いました。
「もう無理じゃないかな」
どうしても入りたい!と、なんとか入った”きばもちイノシシ”。これで6匹となりました。
そこへ”のっそりぐま”がやってきて、わしも入れてくれ!と言いました。
ほんの端っこに入ってもらったけれど、手袋の中は7匹になりました。
もう手袋は、今にも弾けそうです。
さて、森を歩いていたおじいさん。手袋を落としたことに気がつき、探しに戻りました。
先に子犬が駆けていき手袋を見つけましたが、手袋はムクムクと動いています。
子犬が吠えると、中のみんなは驚いて、慌ててあちこちに逃げていきました。
何も知らないおじいさんは、手袋を拾いました。
☆書店員の感想
手袋を落とした場面・拾った場面はシンシンと降る雪の中に手袋の絵のみ。絵として描かれていない物を想像したくなる!
この絵本の面白さは、おじいさんと子犬が描かれていない事です。手袋を落とすまでは現実味があるのに、手袋に動物達が入って行く部分は完全にファンタジー、そして最後におじいさんが手袋を拾う場面で急に現実に引き戻される展開が、他のお話には無い面白さではないかと感じました。
動物達が描かれる場面は、とにかく手袋にこんなに動物が入って大丈夫なの?無理があるんじゃないの?と次第に弾けそうに膨らんでいく手袋を見ながらハラハラさせておいて、子犬に吠えられた瞬間から動物がいなくなり手袋は元通り。そしておじいさんに手袋が拾われると、あっさりと物語が終わっていきます。
なんて面白くてあっさりとした展開。だからこそ、おじいさんと子犬がどんな姿や顔をした人なのか気になるし、どうして手袋が元通りなのかと不思議さが残ります。
手袋の中にどんどん動物が入って行く面白さ。ここでは弱肉強食はありません。動物の中で力や権力の差がない世界観。
入るはずのない動物の数に合わせて、手袋の形も変化していきます。さて、動物達は手袋の中にどう入っているかな?
本書の中では、7匹の動物達が描かれますが、弱肉強食の世界観は無く、みな仲良く共存しているようです。そして動物達はみな洋服を着ています。キレイなワンピース姿のネズミもいれば、つぎはぎのズボンをはいたオオカミもいます。杖を突いてパイプたばこを吹かしたイノシシや腰に両手を回している歳をとっていそうなクマも登場します。名前は「くいしんぼうネズミ」「おしゃれギツネ」と名乗っていますので、それぞれ強い個性も感じます。
描かれるのは雪がシンシンと降る寒い冬のある日。
温かそうな手袋の中に先に入っている動物達と、自分も入りたい!となんとか入ろうとする動物の駆け引きと、その住人の大きさに合わせて手袋がなぜか、少しずつ大きく、そして底冷えしないようになのか2階建てにカスタマイズされていく(リノベ―ジョンされていく)変化を見つけるのも面白い面です。どうして窓が?どうしてそこにドアが??と見つけるほど楽しいです。
たまに道端や公園で手袋が落ちているのを見かけることってありませんか・・・?よく見てみてください。ゴソゴソと中で何かが動いていませんか?
もしそうなら子犬のようにワンワンと吠えて逃げてくれるのを待ちますか?それともそーっと近づいて覗いてみますか?
私だったら・・・どうしようかな。怖いような楽しみなような・・・♬
きっとこのお話を読んだ人なら同じ場面で、私のように一度は考え・想像したことがあると思います。きっとあなたも本書を読めば、落ちている手袋を見るたびにこの物語を思い出し、想像を膨らませる事でしょう。
子どもにも大人にも、世の中に落ちている手袋がある限り、きっとずーっと、そんな「想像する楽しさ」を与えてくれるお話です★