どうぞのいす

「どうぞ」の気持ちを伝える絵本。相手を思いやる気持ち、親切な心を伝えたい★3・4歳からの読み聞かせピッタリ!

☆際立った特徴

  • 1981年発行 40年愛され続けるロングセラー絵本。
  • 可愛らしい動物達が次々登場。接点は”どうそのいす”
  • 思いやりの気持ち「どうぞ」の連鎖。
  • 次々に取り替えっこされていく。テンポが◎。
  • ユーモア溢れるラストシーン★
  • 優しく温かみのある絵。

☆ここを深読みすると面白い!

  • うさぎさんが「どうぞのいす」を置いた意味。
  • 「どうぞ」の意味合いの変化。
  • 「おひるねが少し長すぎたんですよね。」隠された意味。

☆読み聞かせ対話のポイント

  • どうしてうさぎさんは、椅子を置いたのかな?
  • 「食べ物食べてなくなっちゃったね。どうしたらいいかな?」
  • ロバさんはどうして栗を見て、どんぐりの赤ちゃんだって思ったのかな?
  • 空っぽの瓶。次は誰がやってくるかな?どんな事が起こるだろうね。(お話の続きを考えてみよう!)
どうぞのいす 表紙

☆あらすじと書店員の感想

うさぎさんが作った木の椅子。うさぎさんが思いを込めて、大きな木の下に椅子と「どうぞのいす」と書かれた立札を一緒に置きます。

うさぎさんは、出来上がった椅子の後ろに、短い木をつけました。うさぎさんのしっぽのように見える飾りの木です。「僕の椅子だよ」と印をつけたのです。それだけこの椅子に愛情が込めてあることが伝わります。

さて、自分が作ったのだから、自分で使えばよい所ですが、うさぎさんは大きな木の下に作った椅子を置きました。どうしてここに置いたのでしょう?

きっとそれは、日頃から、ここに少し休める場所があったら便利だなと思いながら過ごしていたからなのではないでしょうか。

心を込めて作った椅子だからこそ、自分だけの為でなく、誰かの役に立って欲しい。みんなにもぜひ座ってほしい!と思ったのかもしれません。

”どうぞのいす”で動物達が持っていた食べ物が、次々と取り替えっこされていきます。

最初に”どうぞのいす”を見つけたロバさん。立札を見て、自分は少し体を横にして休みたいから、ここに物を置かせてもらおうかなと思ったようですね。

そしてロバさんはカゴを置いたまま、木の陰に移動してお昼寝をし始めました。

そこへ登場したのがクマさんです。クマさんは”どうぞのいす”に置いてあるかごの中の木の実を見て、「”どうぞ”と書いてあるから、このどんぐりもらっていいんだな」と思い込みます。そしてどんぐりをもらったクマさんは、「自分がどんぐりを食べることで何もなくなってしまった。次に通りかかった人が何もないのは可愛そう。」と考え、持っていたハチミツの瓶を次に通りかかった人の為に置いていくことにしました。

次に通りかかったキツネさんも、クマさんと同様に置いてあったハチミツをもらい、かわりに焼きたてパンを置いて行きました。

次に通りかかったのは10ぴきのリスさん。リスさん達も同様にパンをもらい、かわりに持っていた栗を置いて行きました。

さあ、かごの中のどんぐりが、次々に変わっていきました。動物から動物へと取り替えっこしたのではなく、”どうぞのいす”が間に入って、次々と取り替えっこした形になりました。

動物達に、「どうぞ」の気持ちが連鎖していくような感じがします。

どうぞのいす 裏表紙

うさぎさんの「どうぞ」と、他の動物達が読み取った「どうぞ」の違い。

うさぎさんの椅子は、ロバさんがどんぐりの入ったカゴを置くことによって、うさぎさんが思う「どうぞ」の意味とは違っていきます。

「どうぞ座って下さい」という意味から、「このカゴの中の食べ物をどうぞ」に変わったのです。

ここが、本書の物語の面白い部分ですね。

だけど、結局は、誰かの役に立つのなら、どんな「どうぞ」であれ、うさぎさんの本望だったのかもしれないなとも感じました。

お昼寝から起きたロバさんはびっくり!!

お昼寝から覚めたロバさんは、目をこすりながら、「あれ?どんぐりってクリの赤ちゃんだっけ??」と意味深な言葉を呟きます。

あれ?まだ夢の中かな??と、かごの中の栗を見て思います。目を疑うような出来事だったという事でしょうか。

ロバさんは、まさか自分が寝ている間に様々な食べ物に取り替わっていき、最後に栗になった事など思いもついていないのです。

もしかして自分が寝ている間にどんぐりが成長して栗になったのかな?と考えたのでしょうね。

私はとってもユニークで可愛らしい考えだなと思いました。

「どうぞのいす」作り方

最後の言葉の選び方が絶妙で、面白い!

作者の「おひるねが少し長すぎたんですよね。」という最後の言葉の選び方が絶妙で、面白いなと思いました。

どんぐりが栗の赤ちゃんなんて事はないよねと、ロバさんをフォローしているようにも読み取れます。

見方を変えると、理由を知っている読者にそっと語りかけているようにも感じます。

『ロバさんが寝ている間、とっても楽しい事があったんだけど、それは一部始終を見ていた私達だけが知っている事。結果、どんぐりが栗に替わってしまったけど、誰もが損をしてないし、動物達の思いやりの心で、次の人に「どうぞ」を繋げた結果だったというハッピーな出来事であった。

あえて全てをロバさんに教えてあげなくてもいいよね。きっと驚くから、ロバさんが不思議に思っている事は、このまま不思議としておいてあげてもいいよね。』

と、その言葉の中に様々な意味を込めているように感じました。

だけど、この事を全てを文章化して説明すると、読者の子ども達に1番伝えたかったことがぼやけてしまいます。

だから、「おひるねが少し長すぎたんですよね。」という言葉に様々な意味合いを隠して、物語をまとめたのだと思いました。

本書で1番伝えたいのは、「どうぞ」の気持ち。文章の言葉1つ1つが、子ども達を想って選ばれたものであり、作者の優しさ・温かさであるように思いました。

よっぴー
  • よっぴー
  • 書店員のよっぴーです。2人の男の子と、1人の女の子の母として、毎日育児奮闘中です。
    私は自分の子どもに沢山の愛情を子どもが嫌がる時が来るまで、沢山沢山注ごう。心をもしコップに例えるなら、そのコップが溢れて「もう大丈夫だよ!」となるまで続けようと思っています。それだけは大事にしている信念です。
    絵本を読むのもその一つです。
    大切にしている愛情を伝える方法の1つだと思っています。

    保育士・幼稚園教諭二種・介護福祉士です。
    他に、ベビーシッター・ベビーマッサージ・ベビー’sサインなどの資格も持っています。
    絵本の感想とともに私の育児経験、保育士・幼稚園教諭免許を持つ書店員としてのアドバイスなどをご紹介出来たらと思っています。