ねずみさんのながいパン
ねずみさんが長いパンを持って、どこかに向かっています。向かう先はどこでしょう?いろんな動物たちと、面白いおうちがつぎつぎ出てくる絵本です。小さなお子さんからピッタリ!楽しめます。
☆3つのおすすめポイント
- 小さなねずみさんが、なが〜いパンを持って一生懸命どこかへ向かっています。どこへ向かっているのかな?ちょっとドキッとするところもあり、いろんな動物の登場が楽しいです。
- 動物そっくりのおうち、その家族ぞれぞれの食卓。みんなそれぞれお気に入りが違って、それぞれの温かい家庭の雰囲気がありますね。
- なんだかおうちでご飯が食べたくなってきます。おうち時間っていいな、と思えてくる可愛いタッチの絵本です。
☆あらすじ
ねずみさんが、長いパンを持ってどこかに出かけていきます。
ピンクのおうちに着きました。ここのおうちかな?と見てみると、違っていました。ぞうさんのおうちです。りんごとバナナを美味しそうに食べています。
つぎはちょっと三角のかたちの黄色の家。ここのおうちかな?
いえいえ、ここはキリンのおうちでした。もう朝ご飯を食べていて、美味しそうな野菜サンドを食べています。
今度こそ…このおうちでしょうか。顔を横に向けて座っているような形をしている家です。
こちらも違っていました。ライオンさんのおうちで、お父さんとお母さんは大きなステーキ、子どもたちはハンバーグを食べています。
ねずみさん、どこへ行くんでしょうか。ここのおうちかな?長い耳が特徴的な形をしています。
ここはうさぎさんのおうちでした。ごちそうは、にんじんスープににんじんパンです。
つぎは…あれあれ!まさか、ネコのおうち!?ねずみさん、あぶない!
無事に通り過ぎました。ねずみさん、自分のおうちに向かっていたんですね。ねずみさんのおうちでは、36匹のねずみの子どもたちと、パパが待っていました。チーズと一緒にいただきまーす!

☆際立った特徴
いろんな動物たちのおうちと、家の中、食卓が見られる楽しいお話です。
これは誰のおうちかな?何を食べているのかな?と想像が広がります。
本の大きさは、本を閉じた状態で20㎝✕21㎝で、閉じた大人の両手を並べた分くらいの大きさです。
ピンクの表紙が可愛らしく、中のお話や登場する動物たちもチャーミングで、早くおうちにかえってご飯が食べたい、そんな気分になってきます。
☆書店員の感想
●小さなねずみさんが、なが〜いパンを持って一生懸命どこかへ向かっています。どこへ向かっているのかな?ちょっとドキッとするところもあり、いろんな動物の登場が楽しいです。
表紙のねずみさん、ねずみさん6〜7人分くらいの大きさのフランスパンのような長いパンを抱えて、一生懸命走っているようです。どこへ向かっているのでしょうか。
ねずみさんのしっぽには緑色のリボンがついていて可愛らしいです。
まず通りかかったのは、ピンクのおうち。玄関前の長いらせん階段が、鼻の長さを表しているようです。中では、ぞうさんがもうご飯を食べているところでした。
ねずみさんが持っているパンも、もしかしたらご飯に食べるパンなのかな?と思いました。もう食べてる、ということは、ねずみさんもご飯時できっと急いでいるのかもしれない、そう思いました。
ねずみさんは、とっとことっとこ進みます。この足音も可愛らしいですね。キリンやライオンの家の前も通り過ぎ、ウサギさんの家のつぎのおうち、もしかして、ネコのおうち!?なんとなくこわい雰囲気で、口を開けて入ってくるのを待っているような門構えです。キバもあり、近づいてはいけない雰囲気!ねずみさん、気をつけて!
ちょっとドキドキするシーンでしたね。
そのつぎには、無事にねずみさんのおうちにたどり着くことができました。
長いパンと、大きなチーズが食卓に置かれ、食事の始まりです。たくさんの子どもたちがいて、走り回っている子もいますが、みんな仲良く食事を始めました。にぎやかな声が聞こえてくるようです。
●動物そっくりのおうち、その家族それぞれの食卓。みんなそれぞれお気に入りが違って、それぞれの温かい家庭の雰囲気がありますね。
ねずみさんが通った道にあった家々。住んでいる動物たちに似た家の形でもあり、家の横には動物の顔が描かれた旗がかけられています。これはだれのおうちかな?と、お子さんと一緒にあてっこしながら読みすすめるのも楽しいですね。
次のページをめくると答え合わせのように、家の中で過ごしている動物親子が登場します。みんな好きなものを、楽しく食べている様子が微笑ましく感じます。食卓を囲んで、温かい雰囲気の中、好きなものを食べる。これ以上の美味しさはないように思いました。
また、動物たちの素朴なような絵のタッチにも、ふんわりとした優しさを感じます。ペンで家や動物たちが描かれ、その中を水彩画で色付けされているようです。濃淡も淡いかんじで調整して塗られ、水や動物の模様、体の色の境目の部分などもステキな感じになっています。
ぞうさんのおうちでは、子どもが一生懸命コップに鼻を入れてお水を飲んでいる姿が可愛らしく、りんごの美味しそうな艶も表現されています。キリンのサンドイッチも美味しそうですし、横に置いてあるピンクのジュースの中身も気になります。ニコニコと楽しそうですね。
ライオンさんはさすが、百獣の王ですね。しっかりとしたお肉を食べています。けれど、ナイフとフォークでお上品に食べ、付け合せにサラダがあったり、ワインも飲んでいたりと、品の良い感じがステキなライオン家族です。うさぎさんは人参パンと人参スープで、みんな美味しそうに食べています。
ごちそうをみんな食べていますが、家族ごとにごちそうが違っていますね。好みや、家庭環境など様々ですし、その家ごとに「家庭の味」ってきっとあるように思います。家庭の味に、それぞれの食卓。その家庭ごとにステキな時間が流れていますね。
●なんだかおうちでご飯が食べたくなってきます。おうち時間っていいな、と思えてくる可愛いタッチの絵本です。
ねずみさんのおうち、とっても子沢山です。みんな違う方向を向いたり、自由に過ごしていて、にぎやかな食卓ぶりが伺えます。お話していたり、水を飲んだり、口を開けていたり…。1匹ずつのようすを見ていても楽しく感じます。
また、この長いパンと大きなチーズも、ねずみ視線では大きくて長く見えるのでしょうが、実際人間や他の生き物から見ると普通サイズなのかもしれません。私自身、チーズとパンが大好きなので、目の前にこんな大きなパンとチーズがドーン!とあったら、とっても嬉しくなってしまいそうです!
また、表紙はパキッとしたピンク色の背景ですが、絵本の中の背景はみんなパステルの薄いような色合いの背景で、動物ごとに色が変わっています。薄いオレンジや黄緑色、ピンクに黄色など、優しい色合いです。各家庭のほのぼのとした雰囲気を感じさせるようです。
現在コロナウィルスの影響で、家庭で過ごす時間が増えた方も多いと思います。私自身、今まで「家で過ごす」ことについて、あまり深く考えたことはありませんでした。寝て、食べて、支度して、出かける。それが当たり前のように思っていましたので、生活の変化は大きく感じます。子どもや家族と過ごす時間が増えて、一緒の時間を共有する第一の場所が、自宅であり、食卓ですね。それを最近改めて感じますし、この絵本を読んで、家族で食卓を囲むっていいな、とますます思いました。
家族のために一生懸命長いパンを持って帰ったねずみさん。早くかえって、美味しいご飯を食べさせてあげたいと願うお母さん・お父さんと、みんなで楽しく美味しいご飯を食べたいと思う子どもたち。どちらの気持ちも温かく通い合う、可愛くもあり優しさも詰まった素敵な絵本に感じました。

- 作品名:ねずみさんのながいパン
- 著者名:多田 ヒロシ(インタビュー)
- 出版社:こぐま社