デイビッドが やっちゃった!
「どうしていう事聞いてくれないの!?」と子育てで立ち止まった時の保護者にぜひ見て欲しい!わざと失敗している訳じゃないんです!「ママ。僕、失敗したくないんだよ」
☆3つのおすすめポイント
- デイビッドが様々な失敗をするのですが、それにはデイビッドなりの言い訳があります。幼い子どもなら、誰にでも経験があるような、アルアルな日常を描いています。
- いくら言い訳しても、ママにはお見通し。でもやっぱりママに迷惑をかけてしまっている事は子どもだって分かっています。最後には、ちゃんと謝ることが出来、許され、ママに撫でられながら安心して眠りにつきます。
- 色鮮やかでダイナミックに描かれていています。言葉は全て手書き。デイビッドが文字を書いているようにも感じさせます。漫画のように線で描かれたデイビッド。実は、作者のデイビッド・シャノンさんが5歳の頃に描いていた絵を元にしているそうです。
☆際立った特徴
アメリカの絵本作家デイビッド・シャノンさんが幼少期に描いたイラストを元に描かれた作品。
「だめよ、デイビッド!」「デイビッド、がっこうへいく」に続き、第三冊目の「デイビッド」。今まで『だめよ!』とママや先生に言われていたデイビッドが、今回はしゃべる側に回ります。
小学生のデイビッドと、ママが登場します。ママは、本書の題名が書かれている最初のページで顔の下部分のみ(デイビッドを叱っている様子)と、ズボンを履き忘れたデイビッドを追いかけるシーンと、ラストシーンでデイビッドの頭を撫でる手のみの登場です。
その他のページはデイビッドが様々な失敗をしている様子と、そうなった言い訳が書かれています。
そんな言い訳…通じるわけないでしょうと保護者ならきっと思うような事ばかりなのですが、デイビッドなりの理由があります。デイビッドに近い歳のお子さんなら、きっとデイビッドに共感する事でしょう。
ママの『だめよ!』は、心配している子どもへの愛情。そして、子どもの言い訳は、「僕だって失敗したくなんかないんだよ」という気持ち★
☆あらすじ
デイビッドは失敗してしまうと、いつも言い訳をする。
「僕のせいじゃないよ!」
部屋でスケートボードして転んでしまって、テーブルに当たってひっくり返してしまった時だって、わざとじゃないし。
庭で野球の練習をしていた時に、ボールが窓に当たって割れてしまった時もそう。ボールが勝手に飛んで行っちゃっただけなんだ。
嫌いな物は、どうしても食べたくないし、学校へ行くときにズボンを忘れちゃうのも、わざとじゃないよ。
宿題を忘れてしまったのも、犬が食べちゃったからだし、クラスメイトと集合写真を撮る時は、なんだかみんながかしこまってるから、笑ってしまうんだ。だから僕は変な顔をしたくなっちゃう。
犬のエサを食べたのも、お腹がとっても空いていたからだし、
ネコのしっぽを引っ張ったのも、一緒に遊びたかったから。ネコだって、嫌そうにしていなかったよ。
大好きな物をいっぱい集めて持ち運んでいたら、ジュースを入れたコップ、倒しちゃった。
トイレ汚すのは、僕じゃないよ。パパだよ!
食事中に、大きな声を出して、ごめんなさーい!
寝る前にケーキをつまみ食いしたのは、僕じゃないからね。
ママ。もう分かっているよね。ごめんなさい。全部僕なの・・・。ごめんなさい。
ママ…。許してくれてありがとう。大好きだよ。
☆書店員の感想
デイビッドが様々な失敗をするのですが、それにはデイビッドなりの言い訳があります。幼い子どもなら、誰にでも経験があるような、アルアルな日常を描いています。
家の中でスケートボードをしていたデイビッド。転んだ拍子にテーブルで頭をぶつけちゃって、テーブルに置いてあったスタンドライトが落ちてしまいました。きっとママは「こら!デイビッド」と怒った事でしょう。
デイビッドは応えます。「だってわざとじゃないもん。転んでしまってぶつかってしまったからだもん」と。
外で野球の練習をしていた時も、ボールが飛んで窓を割って、飾ってあった花瓶を転がして、中の土がドバーと出てきてしまいました。ここでもデイビッドは、「だってボールが飛んで行ったんだもん。」と応えました。
この後にも、ママなら確実にデイビッドが悪い!もっと考えて行動してよ!と思ってしまう場面が連発します。
いくら言い訳されても、全てはデイビッドがしてしまった事が原因。
しかし、よく考えたら、大人なら今までに誰もが1度は似たような経験がある事ばかり。そして、誰もが、親に何かしらの言い訳をしてきた事ばかりではないかと、思いました。
私も子どもの時はよく、「自分だけが悪いわけじゃないと思う」と心の中で思っていた記憶があります。言い訳することで、怒られることから逃げたかっただけかもしれません。
なんだかデイビッドが、幼い頃の私のようにも感じてしまいました。
きっと”子どもアルアルということなんでしょうね。
いくら言い訳しても、ママにはお見通し。でもやっぱりママに迷惑をかけてしまっている事は子どもだって分かっています。デイビッドも最後には、ちゃんと謝ることが出来、ママに許され、撫でられながら安心して眠りにつきます。
きっと失敗を繰り返しても「あなたが悪いんでしょう!」とデイビッドのママは強く責めなかったのでしょう。色んな事を見守り、本人が正直になるのを待っていたのではないでしょうか。でも夜になっても失敗やイタズラばかりをしてしまうデイビッド。ママはきっと呆れた顔をしていたのかもしれません。
そしてベッドに入って、ママとおやすみをした時、デイビッドは思い立ったかのように、「そうなの、僕なの!」と正直にうち開け、目に涙を浮かべて謝ることが出来ました。
ここまで言い訳を繰り返してきたデイビッドです。きっと正直になる事が、どんどんできなくなっていたのかもしれません。とても勇気がいる事だったと思います。
ママはいつだって子どもの失敗を怒ったり注意してしまうものです。でもそれは、物を壊したからとか、部屋を汚したから悪いという事を、1番に伝えたい訳ではないと思います。
転んだら危ないよ!宿題忘れたら自分が困るよ。ケガしたらどうするの?危ない目にあった…と、本人よりも誰よりも心配しているという事ではないでしょうか。
だけど、その気持ちがなかなか伝わらずに、何度も繰り返していまうのが子どもです。だからママは繰り返し見守り、注意し、成長を待つのかなと思います。
デイビッドは、ママにちゃんと謝ることが出来ました。
きっとママは嬉しかった事でしょう。そして怒ってごめんねと心で思ったことでしょう。私はきっと、デイビッドも嬉しかったと思いました。デイビッドが眠りにつこうとしています。「ママ、大好きだよ。」と伝えます。きっとその言葉の中には、「僕の気持ちを分かってくれて、ありがとう」という想いが隠れていると思いました。
ママは天使のように眠るデイビッドの可愛い寝顔を見ているだけで、疲れが吹き飛んで、とっても幸せな、満たされた気持ちです。きっと、頭をなでながら、「デイビッド、愛しているよ。」とささやいたのではないでしょうか・・・★
- 作品名:デイビッドが やっちゃった!
- 著者名:作 デイビッド・シャノン 訳 小川仁央
- 出版社:評論社