おばけのてんぷら
おちゃめなうさこと、おばけのドキドキてんぷらクッキング!野菜が少し苦手な子も、てんぷらなら食べられるかも!?熱いうちに召し上がれ。
☆3つのおすすめポイント
- てんぷらってなんて美味しいんでしょう!てんぷらの美味しさに目覚めたうさこ。おいしい天ぷらクッキングが始まります。
- いい匂いがする、うさこの家へ忍び込んだおばけ。うさことおばけのドキドキクッキングから、目が離せません!
- ちぎり絵と切り絵の組み合わせでつくられた絵。場面ごとに素材を変えた組み合わせには、立体感があります。
☆あらすじ
山へ草摘みに出かけたうさこ。そこに、美味しそうにお弁当を食べている、こねこくんがいました。うさこは、ずいっと覗き込みます。
お弁当のおかずは、てんぷらでした。おいものてんぷらをもらって食べます。
うさこは、てんぷらがとても美味しかったので、こねこからてんぷらの作り方の本を借りて、作ってみることにしました。
お店でいろいろな野菜を買って…、小麦粉とたまごと油ももちろん買いました。お小遣いを使い果たしちゃったけど、美味しいてんぷらのためなら、なんてことありません。
家に帰って、さっそくてんぷら作り開始!野菜を切って、じゃーっとあげて…
玉ねぎが目に染みる… ってあれあれ、うさこ、めがねを間違えて衣の中にぽちゃん!
でも、うさこは気づかず、てんぷらに夢中です。
そんなところに、おいしそうな匂いに誘われた、おばけがやってきました。
おばけはこっそりてんぷらをつまみ食い。おばけがいるとも知らず、てんぷらを作り続けるうさこ…。
このあと、おばけに絶体絶命のピンチが訪れます。
うさことおばけの、美味しくちょっぴり刺激的な、ドキドキ!クッキングです。
☆際立った特徴
せなけいこさんの、うさことおばけシリーズです。
ひとなつっこく、少しおっちょこちょいなうさこ。そんなうさこと、いたずら大好きなおばけとの、てんぷらにまつわるお話です。
うさこがてんぷらを作る様子が、レシピを読むように分かりやすく描かれており、うさこが楽しそうに作っていきます。カラッと揚がったてんぷらがとても美味しそうで、夕飯のおかずに食べたいな…、そんな気分になってきます。
絵はちぎり絵と、切り絵の部分があり、細かい部分まで丁寧に描写されています。場面ごとに使用する紙の素材も違っていて、登場人物や風景が豊かに表現されています。
☆書店員の感想
●てんぷらの美味しさに目覚めたうさこ。美味しい天ぷらクッキングが始まります。
てんぷらといえば、なんの具材が思い浮かぶでしょう。
私は自宅でほとんど揚げ物をしません。さつまいもをたくさんもらったときに、てんぷらにするくらいです。しかしそのときは、ものすごい勢いで、食卓からてんぷらがなくなります。
いろんな野菜がてんぷらに合いますし、エビやイカ、とり天も美味しいですね。なんだか食べたくなってきました。
うさこは、こねこくんからさつまいものてんぷらをもらい、その美味しさに目覚めます。
うさこは乾物屋、八百屋、たまご屋で買い出しをしました。
今はスーパーマーケットに行けば何でも手に入りますが、昔は野菜、魚、乾物…と別々のお店で売っていて、商店街が賑わっていたんですね。
たまご屋さんのねこ店員は、たまごをライトに照らして何を見ているんでしょう?ちょっと気になります。以前は普通の光景だったのでしょうか。
うさこはたくさん買い物をして、おこづかいを使い切ってしまいましたが、へっちゃらな様子。なんたって、美味しいてんぷらが食べられるんですもんね。
家に帰り、てんぷらクッキングの始まりです。
さつまいも、さやえんどう、れんこん、じゃがいも、人参、ピーマン、たまねぎ。
衣はたまごと小麦粉と、冷たい水をさっと混ぜます。野菜に衣をさっとつけて、熱い油の中でじゃーっと揚げます。だんだんおいしい匂いが漂ってきそうです。
たまねぎを切るのを忘れていたうさこ。慌てて切り始めますが、たまねぎが目に染みます。涙を拭くためにめがねを外し、なんとうっかり衣の中にいれてしまいました!
それに気づかず、さらにめがねをかけていないことにも気づかずクッキングを再開するうさこ。ちょっぴりおっちょこちょいで、なんとも愛らしくも感じます。
これが、うさこのチャームポイントだなぁと感じました。
●いい匂いがするうさこの家へ忍び込んだおばけ。うさことおばけのドキドキクッキングから、目が話せません!
美味しいてんぷらをたくさんつくるうさこ。そんなうさこの家から漂ってくるいい匂いに誘われて、おばけがやってきます。べろべろばー、と体を小さくして、鍵穴からうさこの家に侵入します。
いかにもいたずら大好き!というような顔をしているおばけ。けれど、うさこのてんぷらを食べているときの、とっても美味しそうなおばけの表情!おいし〜い!という表情が、ひしひしと伝わってくる、満面の笑みです。
うさこは、まさかおばけに食べられているとも知らずに、てんぷらを揚げ続けますが、なんだかすぐ減るてんぷらだな、と不思議に思います。
そんなとき、おばけはあぶらで滑って、衣の中にぼちゃーん!と落ちてしまいます!
「活きのいい具だな」うさこは知らずにおばけを熱いあぶらの中へ入れようとしますが…!
あっ!あぶない!
おばけの運命やいかに…!?
うさこの美味しいてんぷらを、内緒でこっそり食べていたおばけ。人のものを勝手に取ったりしちゃだめだよ、痛い目に合うよということですね。
そんな騒動にも、全く気づかないで、てんぷら作りに没頭しているうさこ。
間違って落とした自分のめがねのてんぷらさえも、美味しそうに揚げたのでした。
●ちぎり絵と切り絵の組み合わせでつくられた絵。場面ごとに素材を変えた組み合わせには、立体感があります。
表紙のうさことおばけ。ちぎり絵の断面がうさぎのもこもこ感を、豊かに表しています。切り絵のおばけは、てんぷらを見て、とても美味しそうな表情をしています。うさこのりっぱな前歯も目立っていて、大きなてんぷらをかじっています。裏表紙のおばけは、おいしいてんぷらを食べたあとだからでしょうか、満足気に眠っています。窓とレースカーテンの素材の組み合わせもステキで、窓の外に夜の山が見える描写に大きな広がりを感じます。
ちぎったり、切ったりした紙が絵の素材となっています。猫のひげやしっぽ、お店屋さんに陳列された商品、野菜の葉っぱ、芽、雲、小さいおばけなど細かいところまで作り込まれています。
うさこがてんぷらを作るシーンも、正面、真後ろ、横、少し斜め後ろなどいろんな角度から描写されていて、うさこと一緒にクッキングをしているような感じがしました。おばけとのやりとりにも臨場感を感じられます。
本の背景は全体に濃いめの青やクリーム色、うぐいす色など落ち着いた色が多く、うさことおばけの白がきれいに際立って見えます。
また、うさこがてんぷらを作りながら食べているシーンから1ページめくると、見開き2ページに真っ黒な山がドーン!と出現!雰囲気が一変して、ここからおばけの登場です。
うさことおばけのお話が、テンポよく楽しくどんどん進んでいきます。ページをめくるごとに絵の雰囲気も違って、どのページも切り絵・ちぎり絵作品として楽しめます。
読んだ後は、てんぷらを食べたくなりますね。お子さんと、おいしいてんぷらを作って味わうのもいいかもしれません。熱いので、やけどに十分ご注意くださいね!そして、熱いうちに召し上がれ。