からすのパンやさん
どんなパンが食べたい??パン好きにもお料理好きもピッタリ!今でもどこかにパン屋さんの風車が回っているのかな?
☆3つのおすすめポイント
- からすの夫婦のもとに生まれた4羽のかわいい赤ちゃん。子育てしながらの仕事は大変で、お客さんがどんどん減ってしまいまいたが、4羽のおかげで最後は大勢のお客さんに愛されるパン屋さんへと復活します!
- あわてんぼうのゴロベエの聞き間違えで、事が大きく膨らみ大騒ぎ。パン屋さんの周りには、とんでもない数のからすが集まってパニック状態!!しかし、からすのお父さんのナイスアイデアが一瞬で解決します!
- からすの子ども達のお友達からの意見を参考に、店をキレイにしてパンの種類を増やしました。子どもだからって侮ってはいけませんね!芯をつく意見に耳を傾けた結果、からすの町で評判の立派なお店になることができました。
☆あらすじ
いずみがもりはからすの町でした。大きな木が200本・中くらいが400本・小さな木が800本あり、その木の上にはみんなからすの家がありました。その中に、からすのパン屋さんがありました。そのからすのパン屋さんに赤ちゃんが4羽生まれました。4羽ともそろってちいちゃくて、可愛い赤ちゃんでしたが、体の色が黒ではなくて、みんな違った色でした。それでもからすのお父さんもお母さんも嬉しくて、早速赤ちゃんにオモチちゃん・レモンちゃん・リンゴちゃん・チョコちゃんと名前を付けて優しく大事に育てました。
子育てしながらのパン作りは大変で、お父さんは赤ちゃんが泣くと飛んでいってあやしたり、抱くものですから、時々真っ黒にパンを焦がしたり、半焼きパンを作ったりしました。お母さんもせっせこせっせこと掃除をしますが、時々赤ちゃんの世話で、お客さんを待たせたり、お店が散らかったままになってしまいました。次第にお客さんが減って貧乏になっていきました。
お父さんもお母さんも心配しましたが、4羽とも元気に大きく育っていきました。騒いだりイタズラしたり、おねだりする子ども達を育てながら、大忙しでお父さんお母さんは働き、そんなこんなで売れない焦げたパンや、はんやきパンは4羽のおやつになりました。
チョコちゃんたちがムシャムシャ食べていると、お友達が珍しがって聞いてきました。「とても変わったパンだね。美味しいの?」チョコちゃんたちに少しもらったお友達は、もっと食べたくなりました。「明日買いに行くから、とっておいてね!」と。
家に帰って4羽はお父さんに早速頼み、沢山作ることになりました。4羽もパンを焼くお手伝いをすることになりました。
みんなでパンの粉を練って、コロコロに丸めて、それをかまどに入れて、やがてホカホカのこんがりした美味しいパンが沢山焼けました。翌日大勢のお友達がパンを買いに来ました。「おやつパンちょうだい!」「もっと安いと毎日買えるのにな」「もっとお店をキレイにしてよね」「もっと色んなパンがあったらいいな!」小さなお客さんが帰るとまずはお店をキレイに掃除しました。そしてみんなで考えて・・・とっても素敵な変わった形の楽しくて美味しいパンをどっさり沢山作りました。
香ばしい匂いが森いっぱいに広がりました。さあ、素敵で面白いパンが出来たことを知ったカラスの子ども達は大変です!あっちの木からもこっちの木からもパン屋さんめがけて飛んでいきます。寝ぼけたサイチどんがその様子を見て驚き、「ワシもうんと買い込むべ!」と大きな入れ物をもって出掛けました。それを見ていたゴロベエはサイチどんに何があったか聞きました。すると、「パン屋の店でやけただと!そりゃ大変だ!!」と消防署へ電話してしまいました。早速消防自動車がやってきて、救急車も飛んできて、武装警官の一連隊もかけつけてきました。そんなこんなでどんどん騒ぎが大きくなって、パン屋さんのお店は押し合いへし合い、上を下への大騒ぎ。パン屋のお父さんは大きな声でみんなに伝えました。『茶色い風車にはパン3つ買われる方・赤は2つ・黄色は1つ・パンを買わずに見学の方は白の風車の所にお並び下さーーい!』すると、あれほど大騒ぎしたからす達は、いっぺんにそれぞれの風車に並びました。不思議なことに火事やけんかや泥棒と間違えて慌てて飛んできたからす達も沢山いたのに、きまりが悪いのか白い風車の所には1羽も並びませんでした。
こうして、パン屋さんはせっせとみんなで働くし、お客さんたちはニコニコ喜ぶし、からすの町で評判の立派な素晴らしいお店になりました。
☆際立った特徴
からすのパン屋さんは、4羽の子ども達が生まれ、子育てとパン屋仕事の両立で忙しくなり、焼きすぎたり半焼きだったり、お店をきれいに保てなかったりと、上手く手が回らなくなりお客さんが減ってしまった。しかし、4羽の子ども達が成長し、お手伝いが出来るようになった頃、子ども達のおかげである出来事が起こります。そして、それがきっかけで沢山のからす達に愛されるパン屋さんへとなりました。家族の絆やパワー・愛を感じる絵本です。
参考文献】「かこさとしおはなしのほん」公式サイト かこさとしさんインタビュー動画
(「からすのパンやさん」が生まれるまでや、続きのお話について、また、絵本の創作への想い、子ども達から学んだことなど。)
☆書店員の感想
本書あとがきに、著者かこさとしさんの「もう一度からす達の表情を見て笑ってください」という言葉があります。ストーリーの面白さに目が行って、からす一羽一羽を見ていなかった私は、もう一度じっくりとからすだけを見てみました。からすのパン屋さんの家族は、子ども達は小さい時はやんちゃもしていますが、タップリとお父さんお母さんから愛情をもらって伸び伸びと育っています。そして子ども達の友達の中にも髪を長くしている子、カバンと帽子でオシャレな子、下の子をおんぶして遊んでいる子など様々です。お店にパンを買いに来たお友達はどんな顔をしているのかな?お店の周りに虫がいたり蜘蛛の巣があって嫌がってる子もいます。表情や体の動きでその子の気持ちを表しています。
後半はからすの大人たちが数えきれないほど登場します。みんな羽の色が違ったり服や帽子でオシャレしたり、お年寄りも幼い子もいます。なんと赤い風車に並んだからすの中に結婚式当日のからす達もいます。(結婚式の途中で抜け出してきたのかな?!)
どれも個性的で、一羽一羽にキャラクターがあり、それでいて主役を邪魔していない所に、著者かこさとしさんの計算された個々の人物描写の素晴らしさと全体を通して総合的に見た時のバランスの良さを感じました。
さて、あなたのお家の近くの森で香ばしい匂いがしていた場所を知りませんか?そしてその上にはからすが飛んでいませんか??そんな森をご存じな方がいらっしゃったらぜひ教えてください!もしかしたらからすのパン屋さんがあるかもしれません!風車があったら決定的かも!?
いっぱい買い込みたいけど、3つまでみたいなので、私は茶色の風車に並ぼうと思います。あなたはどこに並びます??白の風車だけは並ばないでおきましょう!
からすのパン屋さで焼きあがった色んな形のパンを、ぜひ食べてみたいですね。