がたごと がたごと
乗り物好き・妖怪好きにピッタリ!世にも奇妙な電車の旅へようこそ!
☆際立った特徴
- 普通の駅から発車した電車。行き先は山奥の駅や地獄の駅や、昔々の不思議な驛。
- 人間が乗った電車なのに降りるのは、人間では無い?
- 西村さん作「絵で見る日本の歴史」のオマージュページあり。(遠景に北斎『富嶽三十六景』の赤富士、近景に広重『東海道五十三次』のとろろ茶屋の場面)
- 怖そうだけど驚きやユーモアたっぷり!
☆読み聞かせのポイント
- 誰がどんな姿い変身して電車を降りるのか、見比べて楽しもう。ヒントは着ている洋服や持ち物!
- 電車の走る道のりがどのページも見ごたえあり!どんな場所へ行くんだろう?とドキドキしながらページをめくりましょう。言葉が少ないからこそ、ゆっくりと絵を眺めて読み進めたい。
☆あらすじと書店員の感想
電車の停まるホームの絵からお話がスタートします。さあ、どこのホームでも見かける人々の姿がですが・・・着いた先ではその人々が違う姿に!?
最初のページには、結婚式帰りの夫婦、団体旅行に出かける奥様方、ホームの売店でお土産を選ぶおじさん、新婚旅行へ向かうカップルを見送る人達。様々な人々の姿が描かれています。電車でどこへ行くのかな?楽しい旅をするのかな?と微笑ましくその姿を見て楽しむことが出来ます。いざ、電車が動き出すと周りの風景になんだか違和感を感じてきます。
ビルが沢山立ち並ぶ大都会から、急に田んぼが広がる田舎道へ、そしてどんどん山や森の奥へ奥へと進んでいき、山の奥の【おくやま駅】に電車が到着しました。
ここで、読者は降りてきた人々の姿にビックリ仰天!!
結婚式帰りの夫婦はキツネ、お土産を選んでいたおじさんはイノシシ、新婚カップルはネコとウサギ、団体旅行客はブタ・ひつじ・ネコ・牛・イヌ・・・と、人間のはずだったのに動物に変わっているのです。ちなみに動物の顔に変化しただけで二足歩行で歩き洋服も着ています。
ここで更に不思議さをかもし出しているのが、この【おくやま駅】に人間の絵が描かれた「おくやま温泉」の看板が貼られているという所。
沢山の動物が行き来する中に、人間の看板…私には不思議さと違和感と、なにか妙にひっかかる物があります…。この温泉のお客が一体どんな姿で泊まりに行こうとしているのか、想像が楽しくなります。
電車の走る道のりが、とても見ごたえがあります。隅々まで細かく描かれた中に、行き先を想像させるような、なんだか普通じゃない物も描かれています。探してみましょう。
おくやま駅行きの電車とはまた違った電車がホームから出発しました。
さあ、電車はトンネルを抜け、険しい山々の間を走っていきます。真っ赤な赤い水の川が鉄橋の下に流れ、空は茶色く濁り、山の上には1本の松のみが描かれています。ここは鬼が住む地獄で、川に流れるのはまさか血じゃない??と、怖い想像までしてしまう程怖い雰囲気です。そこにふっと白い影のような、雲のような物が電車を追いかけるようにして描かれます。ん??なんだこれは?と不思議に思う事でしょう。
貢をめくると、先程の怖さは無いものの、大きな湖の上を電車が走るのですが、美しい景色のようでもあり、空から稲妻が落ちて鯉が飛び跳ねる姿に、奇妙さを感じもします。
さあ、電車が止まりました。ここは【四辻駅】妖怪・お化けの姿をした乗客がゾロゾロと降りていきます。満開の桜の木の前にはフワフワと浮かぶ火の玉。ここは地獄にも見える場所。一体乗客たちはどこへ向かっていくのでしょうか。
浮世絵に出てくるような、昔の日本の風景も描かれています。何これ?と不思議を不思議としてたっぷり楽しめるストーリー。隅々までよく見てみよう!
3つ目の電車は走るのは、明治時代のようなレトロな街並みや、とろろ茶屋のバックに赤富士が見える景色、そして城下町をお城から見下ろす殿様を描いた景色です。着いた駅はちゃんばら驛】。忍者や着物を着た侍、お姫様や外国人の旅人もいます。下車する人々の横で巨大ナメクジ・カエル・ヘビの妖怪に術をかけ、戦わせる為なのか忍術使いが呪文を唱えています。
何でもありに見えるこの【ちゃんばら驛】は、私は本書の中で描く3つの駅の中で一番謎が多い駅だと思いました。何度読み返しても「これは一体どういう駅なの??!!」と答えが出ないのです。なんだか不思議で見れば見るほど発見がある【ちゃんばら驛】。そこへ着くまでの景色とちゃんばら驛の関係も実は私の中で謎のままです。
しかし、きっと子ども達は私以上に様々な想像を膨らませ、不思議を不思議として楽しんで、発見して、読んでくれるのではないかと思いました。
不思議な世界ってもしかしたら、私達人間のすぐ側にあるのかもしれませんね。気がつかないだけで、隣の席に座っているあの人がサルさんかも。いつも挨拶を交わしているあの人が三つ目小僧さんかも・・・♬
さあ、次の電車はどこへ向かうのか、どんな人が降りてくるのか・・・。電車は海の中を走っていく絵で本書は終わりますよ。沢山のイカや魚の舞い踊り。キレイなサンゴの中に竜宮城が見えるような・・・。続きが楽しみですね。
【参考文献】
・童心社 インタビュー『たたたん たたたん』内田麟太郎さん&西村繁男さん 〈後編〉
・kumonがうた・読み聞かせを応援【ミーテ】西村繁雄さんインタビュー