にんじん だいこん ごぼう ~日本の昔話より~
昔話が大好きな子にピッタリ!「野菜」が主人公の昔話もあるんだよ!
☆際立った特徴
- 昔話の中でも珍しい、「野菜」が主人公のお話。
- 登場人物は3人。擬人化された、だいこん・にんじん・ごぼうは個性的。
- 現代風にアレンジされた雰囲気の絵。日本の昔話ではあるものの、現代風に和と洋が上手に組み合わさっている。
☆読み聞かせのポイント
- 葉っぱの違いや体の形の違いで、3人を見分ける事ができるかな?
- お風呂の入り方の違いを楽しもう!
- 自分のお風呂はどんな入り方かな?洗い方はどうかな?お話する良いチャンスです!
★絵本作家インタビュー 「絵本を読んだ時の幸せな気持ち 子どもたちにも伝えたい」KUMONがうた・よみきかせを応援【ミーテ】
☆あらすじ
あるところに、にんじんと、だいこんと、ごぼうが仲良く暮らしていました。
3人はもともと、今とは違って体が白かったんですって。
ところがある日、3人で泥んこ遊びをしていたら、体中が泥だらけになっちゃって、
しかたが無いから仲良くお風呂に入ることにしました。
最初に入ったのは、にんじん。
アツアツのお湯に我慢して長く入ったものだから、のぼせて体が真っ赤っか。
次に入ったのは、だいこん。
お湯に水を足して、体をよーく体を洗ってから、お湯にドボーンとつかったら、
丁度いい温度で体はポカポカ、肌も元通りの真っ白け。
最後に入ったのは、ごぼう。
お風呂嫌いなごぼうは、適当に体を洗い、お湯にもつからず脱衣場へ。
だからごぼうの体は、お風呂の後も真っ黒け。
沢山遊んだ3人は、お布団に入って眠りましたとさ。
さあ、それから3人はどうなったかって?
にんじんは赤、だいこんは白、ごぼうは黒のままなんです。
☆書店員の感想
●擬人化された、にんじん・だいこん・ごぼうが、それぞれ白い体で描かれます。擬人化された野菜達。
3人はそれぞれ洋服を着ていて、泥んこ遊びをして、風呂に入るという、まさに人間らしい生活をしている様子が描かれている「にんじん だいこん ごぼう」。
このお話の面白さや、数ある昔話の中でも人気がある理由は、この擬人化されている部分と、「もともと3人は体が白かった」という衝撃的な設定にあるように私は感じています。その3人が一体今の色になるにはどんな経緯があったのか、どんな生活をしているのか、気になりませんか?
私は本書の表紙を見た時、これは!!と思いました。自分が知っている「にんじん だいこん ごぼう」のお話が、こんなにも現代的に、可愛らしい洋風さも加わって描かれているなんて!今までに見た事のない「にんじん だいこん ごぼう」なんじゃないかと心が踊りました♬
●子ども達に衝撃と疑問と面白さを与えるお話のオープニングです。
まず、「3人の体は、もともと白かった。」という出だしの一文に合わせて、洋服を着た3人が白い体で描かれています。読者の子ども達は、きっと衝撃を受ける事でしょう。
にんじん・だいこん・ごぼうを見た事や食べた事がある子なら、『え!?だいこんは白だけどにんじんは赤でごぼうは茶色じゃないの??』と、驚きと疑問を抱く事でしょう。
さあ、白い体の3人の見分け方は葉っぱの形や体の大きさです。子ども達はこの違いで、誰が誰だか分かるかな?
●日本の昔話だけど、現代風にアレンジされた服装やインテリアが可愛くて読みやすい。
昔話でありながら、本書で描かれる3人は、着物にぞうりに薪の風呂といった、大昔の日本の姿ではなく、洋服を着てエプロンにカラフルなカゴバックといったような現代にも馴染みがある風景を描いています。現代というよりは、”昭和の日本”と表現した方が良いかもしれません。
そこが、他の「にんじん だいこん ごぼう」を再話した絵本の中で本書が大きく違う部分だと思います。
服装だけでなく、3人が住んでいる家の中も、ベッドがあったり、お湯が出る蛇口があったりと、今の生活スタイルと似ています。タイルのお風呂や風呂の蓋が木、布団が和柄などという所。
少し昭和感を出すことで、子ども達に説明しなくても、何が何の道具なのか分かる程度の”昔”である所が、私の驚いた部分であり、なんて読みやすい!と感心した部分です。
昔話が大好きな私にとって、このように現代風に描かれた作品は新鮮だったし、昔話が初めてだという子にピッタリな作品ではないかと思いました。
●「だから今は白じゃないんだ!なるほど!」と納得してしまう面白さ。
これは私の想像ですが、昔々の子ども達が、もしかしたら「どうして大根は白くて、にんじんは赤くて、ごぼうは黒なの?」と大人に尋ねた事から、このお話が生まれたのかもしれませんね。その時、大人が子どもに分かりやすく伝えるのに考えたのがこの「にんじん だいこん ごぼう」のお話だとしたら、とっても愉快でわかりやすくて楽しいなと思いました。
せっかちで我慢強いにんじんが、お風呂にのぼせて赤色に、きれい好きでマイペースな大根が元通りの白色に、風呂嫌いで面倒くさがりのごぼうが汚れが取れずに茶色に…それぞれの個性も加わって、みんな違ってみんな良い!そしてみんなが尊重し合って仲がいい所がなんともハッピーエンドな物語だと思いました。
●お風呂に入る時の教訓にもなるお話。「どんな風にお風呂に入っているかな?」とお子さんとお話しましょう!
体の洗い方は人それぞれですね。水が苦手な子もいれば、お風呂の度に泡で体中をモコモコさせて楽しむ子もいるでしょう。おもちゃで遊びたいからと、適当に洗ってすぐに浴槽へ!という子もいるかもしれませんね。
さあ、自分はどうでしょうか?にんじんタイプ?だいこんタイプ?ごぼうタイプ?
私は小さな頃はアトピー肌で、体中に掻きむしりがあったり、赤く腫れあがったりしていました。治療中は温めると体が痒くなるので、ゴシゴシ肌を洗う事も出来ず、サッサッサッと洗って10秒浴槽につかって上がるというマイルールがありました。だから、ここで言う所の「ごぼうタイプ」です。
さて、みなさんはどうですか?ぜひ親子でお話しましょう。
上手に洗いたいと思っている子は、だいこんの洗う姿を見て参考にするのも良いかもしれませんね。
また、無理して入るとニンジンさんみたいにのぼせちゃうよとお話する、良い機会にもなりますね。
- 作品名:にんじん だいこん ごぼう 日本の昔話より
- 再話・絵:植垣歩子 白泉社インタビュー「お年寄りを描きたくて、大好きだった絵本の道に」
- 出版社:福音館書店