まんなかのはらのおべんとうや
ピクニックや遠足前の読み聞かせにピッタリ!村のみんなにピッタリのお弁当をあなパパさんが作ります♬
☆際立った特徴
- あなパパさんはお弁当屋のあなぐま。「あなパパさん」と呼ばれている。
- 村のみんなの為に1つ1つ内容を変えてお弁当を作り配達。
- 配達されたお弁当を見ているだけで、あなパパさんの気持ちが伝わる。
- 木の妖精のような存在の「ねっこねずみ」と出会う。
- あなパパさんが小さくなり…と、不思議な体験をする。
- 村の全体像を空から俯瞰で見たり、あなパパさんの目線で描いていたり、アングルは様々。
- 温かみのある色合い。町全体が穏やかで、春の温かい風がフワッと通っているよう。
- 動物達は特徴を壊さずリアルな部分も残しつつ、擬人化されている。
- 「まんなかのはらのおべんとうや」シリーズ3作品の中の1作目。
☆読み聞かせのポイント
- 登場するお弁当をそれぞれ見ているだけでも、届けた相手を想って作ったんだなと伝わります。デコレーションしたりクイズで遊べるように工夫されたり。色合いも抜群に良くてとっても美味しそうです。「どれが食べてみたい?」「今度〇〇ちゃんのお弁当には何を入れようか」など、話が膨らみそうですね。
- あなパパさんはねっこねずみのしっぽをつかむと、体が小さくなります。夢のような体験ですね!「あなパパさんみたいに小さくなったら面白いね!」
☆あらすじ
だんだん村の”まんなか野原”にアナグマさんのお弁当屋があります。
アナグマさんは「あなパパさん」と呼ばれています。村のみんなのお弁当を作ってくれる優しいパパさんみたいだからです。
朝早くからお弁当を作っていたあなパパさん。今日のお弁当の注文10個と、あなパパさんの分のお昼ご飯も出来上がりました。
すぐに配達車に乗せて、さあ届けに出発!
まずはヤギのお家に届けました。ふたを開けると、子どもみたいに目を輝かせたヤギさん。中身は足が弱って自分で見に行く事が出来ないヤギさんの為に作った「桜のお花見弁当」でした。
次はうさぎちゃんのお家には、「赤ちゃんが生まれたお祝いのパーティ弁当」を届けました。お父さんお母さんも、赤ちゃんも、上の子ども達もみんなが喜ぶお弁当には、おめでとうの気持ちが込められています。
橋の工事をしている仲間たちには、中身が「ごぼう うめぼし しゅうまい・・・」としりとりが出来る「しりとり弁当」を届けました。美味しくて楽しくて仕事の疲れも吹き飛びます。
お弁当を全部届けると、あなパパさんのお昼休憩時間です。今から咲こうとしている可愛い蕾の”うふふの木”の下で、お弁当を広げるました。するとどこからか「お腹が空いたよー」と声が聞こえ、「ここにありますよー!」と答えると、見た事のない小さな子が現れました。
その子はねっこねずみ。
ねっこねずみの家族の中で料理係の子しか料理が作れないのに、その料理係が熱を出してしまったと話しました。
「何か手伝う事ありますか?」と聞いたあなパパさん。ねっこねずみのしっぽにつかまると不思議なことが起こり始めました。なんと、あなパパさんもねっこねずみの大きさに小さくなってしまったのです。そしてねっこねずみの家に入ると、ねっこねずみに連れられて階段をどんどん降りていきます。
着いたところは”うふふの木”の下の家。ねっこねずみには他にも沢山の家族がいてみんながお腹を空かせていました。あなパパさんのお弁当だけでは足りません。
あなパパさんは台所を借りて、お弁当の中身を使ってアレンジメニューを作ります。ねっこねずみ達も手伝います。ポテトサラダをコロッケに、ご飯をおむすびに。みんなでワイワイガヤガヤ♩
ねっこねずみが笑うと、部屋の空気がキラキラしていきます。
風邪を引いた料理係の子にもおかゆをコトコト。全員分の美味しいご飯が出来ました。
お腹がいっぱいになったねっこねずみは、着ているお洋服をヒラヒラさせながら、跳ねるように、舞うように、可愛くキレイに踊り、歌います。ねっこねずみは、この木に歌を聞かせて応援するのが役目のねずみだったのです。
その姿に、あなパパさんはうっとり。
外に出たあなパパさんは、体のサイズが元通りに戻りました。見上げると蕾だった”うふふの木”には、枝いっぱいのピンク色の花が咲いています。
ねっこねずみ達は、あなパパさんに感謝して、手を振って見送りました。あなパパさんも「友達になれて嬉しかったよ!うふふの木が前よりもっと好きになったよ!」と笑いました。
嬉しい気持ちの帰り道、「さあ、今日の夕ご飯のお弁当は何を作ろうかな♩」
☆書店員の感想
●アナグマさんは「あなパパさんと呼ばれています。」みんなのパパのような存在と言う事ですね。とっても素敵だなと思って本書を読み始めました。
あなパパさんはお料理が得意!毎日注文の相手の事を思って「どんなお弁当だと喜んでくれるかな?」と考えて、思いを込めて作っています。全員のお弁当が同じではない所があなパパさんのすごい所!
足が悪くてお花見に行けないヤギさんの為お花見弁当を、赤ちゃんが生まれたウサギさん家族の為に素敵な物いっぱい赤ちゃんにプレゼント弁当を(上のお兄ちゃんお姉ちゃんにも向けた可愛い5種類のお弁当ですよ♩)、工事現場で働く仲間たちが休憩中少しでも楽しい気持ちで過ごし、元気が出て昼からも頑張れるようにのしりとり弁当です。
弁当を受け取り、蓋を開いた時のみんなの嬉しそうな表情は、読者を嬉しい気分にさせてくれます。どれもなんて特別感のあるお弁当だろうと思いました。
●後半は、あなパパさんが「うふふの木」の妖精のような存在のねっこねずみと出会い、お家にお邪魔して、ご飯を作ってあげるストーリーです。
料理係が風邪をひいてしまって、他のみんなが腹ペコという設定が面白いですよね!「うふふの木」の花がまだ咲かないのは、ねっこねずみ達が腹ペコで歌ったり踊ったりできず、「うふふの木」を応援出来ないからだった・・・という事は後に分かるのですが。
決して、あなパパさんがご飯を作ったのは、うふふの木の花を咲かせてほしい為ではありません。お腹を空かせたねっこねずみ達の為です。あなパパさんはお腹が空いている子をほっておけないのです。
お腹がいっぱいになって元気が出たねっこねずみは、素敵な歌と踊りで「うふふの木」を応援し、結果、あなパパさんが外に出ると満開になっていました。
ねっこねずみと「うふふの木」から、元気と嬉しさをもらったあなパパさんでした。
満開になった「うふふの木」は、これから村のみんなにも元気と笑顔を届ける事でしょう。
●元気が無ければ誰かを応援する事は出来ません!誰かを応援する分、自分の事も大切にしてあげなくちゃね☆と感じさせるシーンが裏表紙の内側に描かれています。家に帰って遅めの昼ご飯を食べる、あなパパさんの姿です。
私は、もしかしたら本書はパパママへ向けたメッセージが込められているのではないかと感じました。「子ども達や家族の為に頑張りすぎるのではなく、自分の事も大切にしましょう」と。
- 作品名:まんなかのはらの おべんとうや
- 著者名:作 やすいすえこ 絵 重森千佳
- 出版社:フレーベル館