ペンギンかぞくのおひっこし
美しく描かれる地球と黒くすすけた地球のギャップに、きっと驚くストーリー。きっと自分たちに出来る事がある!と地球環境について考える機会にピッタリ!
☆3つのおすすめポイント
- ペンギンの家族は住んでいた氷が溶けて小さくなってしまい、素敵な引っ越し先がないか探す旅に出掛けます。しかし、キレイな場所がなかなか見つかりません。
- 僕たちが住める場所はもう地球にはないのかな・・・とペンギン達は地球を出て月へ向かいますが、月から見た地球は、どの星よりも美しいことに気が付きます。ペンギン達は地球に戻り、自分たちに出来ることがきっとある!美しい地球を守っていこう!と心に決めるのでした。
- 小さな子にも良くわかる、環境を考える絵本です。美しい絵のタッチでどのページも絵画のように感じます。だけどそこにはペンギン達が住めないような環境がありました。地球の環境について子ども達に伝える一冊にお勧めです。
☆あらすじ
84羽のペンギンの家族は引っ越しを決めました。地球がどんどん温かくなって、ペンギン達の氷のお家が溶けてしまったからです。
「もっと素敵な場所がきっとある。」つるつるの氷の船に乗って、みんなで出発しました。
「南の方に、キレイな海があるって聞いたことがあるよ!」ペンギンたちは楽しみにしながら探しに行きましたが、そこには、キレイな海はありません。
真っ黒な海で前が見えないその場所は、ペンギンたちにとって住めそうにもない所。
「東の方に、とってもキレイな原っぱがあるって聞いたことがあるよ!」ペンギンたちは楽しみにしながら、探しに行きましたが、そこには、キレイな原っぱはありません。
真っ黒い煙がもくもくのその場所は、ペンギンたちにとって住めそうにもない場所。
「西の方にとってもキレイなお花畑があるって聞いたことがあるよ!」ペンギンたちは楽しみにしながら探しに行きましたが、そこにはキレイなお花畑はありません。
黒い砂場が広がっているその場所は、ペンギンたちにとって住めそうにもない所。
「北の方に、とってもキレイな森があるって聞いたことがあるよ!」ペンギン達は楽しみにしながら探しに行きましたが、そこには、キレイな森はありません。
『地球には、僕たちが住める場所が、もう無くなってしまったのかな・・・。』
ペンギン家族はお月様に向かいます。そこには、きっと新しいお家があると信じて。
「さようなら、地球さん…」
ぺんぎん達はお月さまから地球を見て、ハッとします。『僕たちが生まれた地球は、こんなに青くて、まん丸で、眩しいんだ。どの星よりもキレイなんだ。』という事に気が付くのです。
「戻ろう、地球を汚したままにはできないよ!きれいな地球を守るために、僕たちも出来ることはきっとある!!」
☆際立った特徴
ペンギン達は、地球温暖化が原因で、住んでいた氷が小さくなり、新たな住み家を探しに北へ東へ南へ北へと出掛けます。キレイな場所ってどこにあるんだろう?噂を聞いてウキウキワクワクして探しに行くのですが、そこには美しい場所は見当たりません。「地球上にはもう、僕たちが住める場所はないのかな。」ペンギン達は月へ向かいます。そこで見た地球とは・・・地球を外側から見たら、一体どんな星なのでしょうか・・・?
ペンギンたちの期待でいっぱいの色あざやかなページから、黒いすすけた色におおわれたページにうつるたび、胸が痛くなります。
その色のギャップが大きい分、黒くすすけた色の世界って嫌だなと感じるし、鮮やかなペンギン達の希望する世界が、「こんな美しい場所があったら素敵だな!そんな地球であってほしいな!」と心から感じます。どうにか美しい地球を自分も守りたい、何か出来ることはないかな?と考えさせられます。小さな子どもたちにも理解できる言葉で語りかけます。
実は84羽のペンギンは、1997年に地球環境を考える国際会議で採択された京都議定書に署名した84か国を象徴しています。(気候変動への国際的な取り組みを定めた条約)
☆書店員の感想
ペンギンの家族は住んでいた氷が溶けて小さくなってしまい、素敵な引っ越し先がないか探す旅に出掛けます。しかし、キレイな場所がなかなか見つかりません。
84羽のペンギンの家族が住むには、大きな氷の地面が必要です。しかし、どんどん温かくなる気温に、氷は溶け、84羽が乗るにはかなり狭い氷の地面になってしまいました。
「もっと素敵な場所はきっとあるよ!」ペンギン達は、これから出会う新たな場所を探しに出発しました。
「南にとってもキレイな海があるって聞いたことがあるよ!」誰かが言いました。すると、「お魚型の潜水艦で青く透き通る海をすいすい泳ぐんだ」「よし、行ってみよう!」と、心はずませながら南へペンギン達は向かいます。
しかし、そこには前が見えないほど真っ黒な海が広がっていました。サンゴも水草も真っ黒で真っ暗なこの海の中には、美しさはありません。ここには住めません。ペンギン達は旅を続けることにしました。
「東にキレイな原っぱがあると聞いたことがあるよ!」誰かが言いました。「カタツムリさんのお家に住んで、緑の原っぱをどんどん進むんだ!」と、うきうきわくわく。しかし、行ってみるとそこには、キレイな原っぱはありません。真っ黒い煙がモクモクと立ち込めるような工場地帯です。「こんな所に住めないよ。」ペンギン達は旅を続けます。
西のキレイなお花畑の噂を聞けば、「お花のお家に住んでハチさんと甘い黄色いハチミツを沢山食べるんだ!」と探しに行き、北にキレイな森があると聞けば、「木のお家に住んで鳥さんの優しい虹色の歌声でるんるん らんらんと目が覚めるんだ!」と探しに行きました。しかしそこには・・・、木も花も枯れてしまった黒い砂浜が広がっている場所と、全ての葉っぱが枯れてしまい、幹しか残っていない森でした。
こんなに悲しい事はありません。夢に見ていたような美しい場所はもちろん、どこへ行っても自分たちが住めそうな場所がありません。どこも真っ黒で真っ暗で、冷たいような…とても寂しい景色が広がっていたのです。
僕たちが住める場所はもう地球にはないのかな・・・とペンギン達は地球を出て月へ向かいますが、月から見た地球は、どの星よりも美しいことに気が付きます。ペンギン達は地球に戻り、自分たちに出来ることがきっとある!美しい地球を守っていこう!と心に決めるのでした。
もう、自分たちの住めるような美しい場所はないかもしれない。こんな真っ黒い地球なんて手放してしまおう。光り輝いて見える月へ行ってしまおう。と思ったペンギン達です。
沢山の気球に別れて乗り、どんどん空高く登っていくペンギン達。きっと地球には二度と戻らないと強く決意して気球に乗ったのでしょう。空の色は美しい夕日色です。空ってこんなに美しかったっけ?と感じているペンギンもいるかもしれません。そして、登っていくにつれて地面が遠くなり、雲の中に入って、どんどん見えなくなる地球の景色。ペンギン達は信じています。この地球を離れてしまっても、きっと月は美しく、僕たちが住めるような環境なんだと。
そして、いよいよ月に到着しました。月に着いてみて、ペンギン達はハッとしました。地球の青さに、まん丸さに、眩しいほどに美しい事に驚き、そして、どの星よりも美しい地球が、僕たちにとって一番の場所なんだと、気が付くのでした。「やっぱり戻ろう!地球を汚したままにはできないよ!!」ペンギン達は、真っ黒な地球に戻り、自分たちの手で美しい地球にしようと心に決めました。そして、地球に戻るのでした。
小さな子にも良くわかる、環境を考える絵本です。美しい絵のタッチでどのページも絵画のように感じます。だけどそこにはペンギン達が住めないような環境がありました。地球の環境について子ども達に伝える一冊にお勧めです。
キレイな地球になるために僕たちに出来ること・・・それは、一体どんなことでしょうか。本書の中のペンギン達の答えは描かれていませんが、きっと何か行動に起こしていることでしょう。さて、人間はどうでしょうか?地球を汚し、動物隊の環境を変えてしまった人間達は、この地球を一人一人がどのように見ているのでしょうか。最近ではプラスチックのストローをやめようとか、ビニール袋をマイバックに!という活動が定着してきました。さて、子ども達には、現代の地球環境について、どのようにこの事を教えてあげると良いのでしょか。きっと幼い子ども達には、難しいですね。
本書を読んでいると自然と、「地球を大切にしていきたい。」「美しい地球を守りたい」という気持ちになります。一人一人は小さな力ですが、きっとそんなみんなの気持ちが、大きな実を結んでいくのではないかと思いました。
ぜひ、地球の美しさや、大切さを感じたり、教えたりする為の一冊にして頂きたいなと思います。
- 作品名:ペンギンかぞくのおひっこし
- 著者名:刀根里衣
- 出版社:小学館