おへそのあな
もうすぐ赤ちゃんが生まれるお母さん、家族が増える、お兄ちゃん、お姉ちゃんになるお子さんにおすすめです。
☆3つのおすすめポイント
- 赤ちゃんの誕生を心待ちにしている家族の、楽しみな気持ちがとても伝わってきます。
- もうすぐお兄ちゃん、お姉ちゃんになる予定のお子さんも、赤ちゃんに会うのが更に楽しみになりそうです。
- ほんわか水彩タッチで、生まれてくる赤ちゃんや家族の、楽しみでもありドキドキもしているような気持ちが表現されています。
☆あらすじ
もうすぐ3人目の赤ちゃんが生まれてきます。
私、お姉ちゃんになるの、ぼくお兄ちゃんになるんだ、このロボット見せてあげるんだよ、と、きょうだいもとても楽しみにしています。
お父さんとお母さんは名前を決めたり、おじいちゃんは安産祈願を書いたり…。和気あいあいと過ごしています。
そんなようすを、おへそのあなから見たり、聞いたり、においをかいだりしている赤ちゃん。家族と赤ちゃんの、誕生前日のお話です。
☆際立った特徴
赤ちゃんの、安心した表情の表紙にまず惹かれます。
また、赤ちゃんのまわりを囲んでいる円の水彩のにじみ具合で、赤ちゃんはお腹の中で守られて安心している様子が、すごく伝わってきます。
表紙の雰囲気は、絵本の中全体につながっていきます。
家族のにぎやかで仲の良い雰囲気。赤ちゃんが外へ出る準備をしているようす。ドキドキ、楽しみ…が伝わってきます。
最後に、赤ちゃんから家族へのメッセージがあり、グッとくるものがありました。
カバー内側の左に赤ちゃん、右にお母さんいて、へその緒でつながっています。
本を開くあなたがが、へその緒を切る。そんな素敵な仕組みになっています。
☆書店員の感想
お腹の中で赤ちゃんは何をしているのでしょう。
この絵本を読んで、まず、本当におへそから赤ちゃんが外の世界を見ていたら面白いなと思いました。においを嗅いだり、外を見たり、そんな楽しみがあれば、お腹の中で過ごすトツキトオカも楽しいかもしれませんね。
丸いおへその穴から覗きます。ページのふちが丸く描かれているページでは、赤ちゃんと一緒におへそから家族を覗き見している気分です。
お腹から見えたお兄ちゃん。壁には「あかさゃん」とたどたどしいひらがなで書いた文字と、赤ちゃんの似顔絵。お兄ちゃんは一生懸命な表情で何かを作っています。赤ちゃんのために、かっこいい”なにか”を作りましたよ。
つぎはお姉ちゃん。得意げな顔をしてなにかにお水をあげています。大きく育てて、赤ちゃんに見せるそうです。おしゃまな、ちゃっかりしてそうなお姉ちゃんの、なんとも言えない「ふふん」とした表情が可愛らしいです。
つぎはお父さんが見えました。お父さんからも、赤ちゃんになにかプレゼントがありそうです。後ろに飾られたカレンダーには「はやくうまれてきてね」の文字が書かれていたり、まわりには赤ちゃん用の育児雑誌が置かれていたりと、赤ちゃんの誕生を心待ちにしているのが、どのページからも伝わって来ます。
お腹が大きくて大変なお母さんですが、お兄ちゃんとお姉ちゃんが、ご飯のお手伝いをしてくれます。頼りになりますね。
お母さんからのプレゼントは、バランスの良い食事です。
赤ちゃんは、料理のおいしそうな匂いと一緒に、家族の温かいにおいも感じているのかもしれませんね。見えていなくても匂い、音、もしかして味も…感じていることはたくさんあるのかもしれないと思いました。
赤ちゃんの誕生、新しい命の誕生、お母さんにとってはドキドキもしますが、とても神秘的で家族みんなの大きな楽しみですね。おじいちゃんとおばあちゃんもニコニコ準備を進めています。
だれに似ているかな、男の子かな、女の子かな。いつ生まれてくるだろう。どんな子に成長するのかな…。みんなそれぞれの思いで、誕生を心待ちにします。
お母さんもドキドキしていますが、赤ちゃんもきっと、外の世界に出るのはドキドキしているのかもしれないと感じました。
おへその穴から、楽しそうな様子が見られたり、音が聞こえたり、こんな温かい家族が待っていてくれている。
家族だけじゃない。風の音や波の音、鳥や花…いろんなものが外で待っていてくれている。
外の世界には、どんな楽しみが待っているんだろう。そう赤ちゃんもお腹の中で思えると、生まれていくのがすごく楽しみなんだろうなと思いました。
絵は、水彩の太い線と細い線を交えて、背景や小物、人物が書かれていて、家族の穏やかな、ほんわかした雰囲気が感じられます。
水彩のにじみ具合にも味があり、かつ細かいところまで綿密に書かれています。
お父さんの楽譜や、壁に貼ってある目標、名付け本のタイトルなど、隅々までじっくり見たくなりました。
最後のほうのページの、家族みんなが寝ているシーンで、お父さんとお兄ちゃんのおしりが、同じようにちょっと出ているところに親子感を感じて、クスッとしました。
また、赤ちゃんと一緒に、月が描かれているページがあるのですが、三日月も満月も、絵なのに不思議なくらい光り輝いて見えて、眩しく感じました。
この絵本を通して、生命の神秘や、妊娠出産の奇跡を感じ、胸にジーンとくるものがありました。
最後の赤ちゃんの言葉にも、頑張ってね、みんな待ってるよ、と言葉を贈りたくなります。
お腹の中の赤ちゃんも、もうすでに家族の一員ですね。
生まれる前のドキドキ感や、楽しみな様子もそうですが、お腹の中にいるときからの、家族の絆を感じる粋な作品だと思いました。
- 作品名:おへそのあな
- 著者名:長谷川義史
- 出版社:BL出版