じぶんで おしり ふけるかな
就学前の子にピッタリ!自分でおしりがふけるようになれたらいいね。とおおらかな気持ちで読んで楽しみましょう!
☆際立った特徴
- お母さんにお尻を拭いてもらっている男の子が主人公。
- トイレで出たウンチが舟になって、主人公の男の子がその舟に乗るという驚きの展開。
- 場面が急に変わるが、さほど違和感なく物語が進む。
- 舟は嘘をつくと小さくなる。嘘は良くないよねと話すきっかけに。
- お尻の拭き方を怪獣がレクチャー。
- 怪獣の風貌は優しい仏様のよう。しかし頭に角があり鬼らしくもある。しかし表情が優しくて可愛い。
- お尻を拭けたことを親子で喜ぶ姿。1歩の成長がとても嬉しいことだと感じる。
- 監修の藤田紘一郎さんによる「お尻拭きのポイント解説」を物語の後に収録。
☆読み聞かせのポイント
- トイレに行き始めた3歳頃から就学前の5歳頃にもピッタリの絵本です。小学校の入学までに自分でお尻を丈夫に拭けるようになるといいね。
- 自分で拭けるようになるアドバイスがあとがきに載っています。お母さんお父さんにとっても為になるアドバイスです。自分で出来るようになるまで、気長に付き合ってあげたいものですね。
- どうして舟がだんだん小さくなっていったのでしょう。お子さんと話し合ってみると良いと思います。
- お尻が拭けない事は恥ずかしい事ではないよ。でも練習して拭けるようになったらいいねとお話してあげましょう☆
☆あらすじ
ひろき君はトイレに行きました。
うんちがポチャン、その後長いうんちがウニョニョニョと出ました。
その長いうんちは、まるで舟のような形。
すると便器の中は海のようになりました。海の中には金色の魚やワカメが泳いでいます。気がつくとひろき君は、金の舟に乗っていました。
そこに大きなクジラが来ました。
「君はウンチの後、自分でお尻が拭けるかな?」
拭けるよ!と答えると、なぜだかひろき君の乗る舟が少し小さくなりました。
大きな入道雲がひろき君の乗る舟を持ち上げ、聞きました。
「君はもちろんウンチの後自分でお尻を拭いているんだよね?」
もちろん!と答えると、また舟が少し小さくなりました。
海の上をプカプカと舟で進むと、ブタ君が乗った立派な舟がこちらにやってきました。
「僕はまだママにお尻を拭いてもらっているんだ。君はもう自分で拭いているの?」とブタ君がひろき君に聞くと、「も、もちろん。拭いているよ」と答えました。
しかしまたひろき君の舟は少し小さくなりました。
次に、もし舟が小さくなったら、沈んでしまうかもしれません。
急に大きな嵐がやって来て、穏やかだった海が大きな波をあげました。ひろき君の舟が大ピンチ!嵐が過ぎると、島に着きました。
そこには怪獣がいて、
「わしが上手なお尻の拭き方教えてあげるよ。」と、お尻の拭き方を教えてもらいました。
丁寧な教え方だったので、ひろき君にも出来そうです。
「今日からやってみるね!」とひろき君が言うと、舟が元の大きさに戻り、舟はもと来た方へ戻って行きました。
さて、ひろき君はまた便器に座っています。
「今日は自分で拭くから大丈夫!」ひろき君は自信満々です☆
急にお兄さんらしくなったと、お母さんが誉めてくれました。
☆書店員の感想
最初本書を読んだ時、ストーリーに驚きました。トイレに入っていたひろき君の姿から、ウンチの舟に乗るという…。現実世界からひろき君の空想の世界に吹き飛んで、その世界観に引き込まれるかのようにストーリーが展開していきます。「すごいストーリーだな。」と思い、一体どういう事だったのかなと”???”が頭に浮かびました。
よーく考えてみたら、子供って実はそんな世界の中にいるなと気がつきました。急に自分だけの空想の世界に引き込まれ、どっぷりと考え、楽しみ、気がついたら現実に戻ってきます。一人遊びの時なんかによく見られますよね。ひろき君はトイレの中で急に空想の世界に入ったんだろうなと思ったら、私の中で「そういう事か!」としっくりきました。
子供は、もしかしたらそんな空想の世界でも、何かを学び、好奇心を広めて、自分なりに成長するきっかけを探しているのかもしれません。
●そんなひろき君の空想の中には、2つのキーポイントがありました。
1つ目は【ウンチした後自分で拭けるかな?練習して上手に拭けるようになろうね】ということ。2つ目は、ひろき君は【なぜ自分でお尻が拭けなかったのに「拭ける」と言った(見栄を張った)のか。】と言う事です。
ほとんどの保護者は就学前になんとか拭けるようになってほしい。練習させなくちゃと思っていますよね。
私も子どもがいよいよ年長児なので最近どう教えたら上手く拭けるようになるかと考えています。小学校では便が拭けなくても誰も助けてくれませんもんね。
本書の中では、怪獣が上手な拭き方を丁寧にレクチャーしてくれます。その後ひろき君も上手なおしり拭きを見せてくれるので、読者の子ども達にも伝わりやすく、実際にやってみたい気持ちになると思いました。もちろんひろき君にとっても良い出会いになりました。自分でやってみるぞ!という気持ちになっています。とっても素敵な成長ですね。
2つ目について。ひろき君は自分でも、いつもウンチの後にお母さんに手伝ってもらっている自覚があったはずなのですが、聞かれると「自分で拭いているよ」と見栄を張りました。嘘をつく度にひろき君の乗っている舟が小さくなるという不思議な現象が起き、だんだん乗るスペースが小さくなっていくので、ひろき君は沈没してしまわないかと驚き、ヒヤッとします。
そんな時、怪獣のもとに辿り着きました。ここで、怪獣に「本当は自分で拭いていないんだろ?」と言われるのです。怪獣には全てお見通しなのです。
ここで肝心なのは、【どうして見栄を張ってしまった(嘘をついた)のか】です。
どうしてだと思いますか?
私は、きっと自分位の子どもなら拭けて当然なのに、自分はまだ拭けない事への劣等感があったのではないかと思いました。まだまだ幼い子供のひろき君だけど、彼なりにお母さんに頼っている事の恥ずかしさもあるのかもしれませんね。
結局、怪獣にはすべてお見通し。優しい怪獣は、やり方を教えてあげるよと、見栄を張ったひろき君を怒るわけでもなく、それが真実になるように力を貸してくれたのです。
その時、素直にやり方を聞くひろき君は素晴らしい姿でした。きっと彼にとって良い機会だったんだろうと思いました。自分で出来るようになった時の喜びや、少し成長したんだという自信も感じられるラストシーンになっていました。
トイレトレーニング中のお子さんに読んであげるのにピッタリな作品だと思いました。子供ながらに色んな思いをもっているものです。本書の怪獣のように子ども達に分かりやすく、自分で出来るように考えて、教えてあげたいものですね☆
- 作品名:じぶんで おしり ふけるかな
- 著者名:深見春夫
- 監修:藤田紘一郎
- 出版社:岩崎書店