サムとデイブ、あなをほる
冒険好きな子にピッタリ!”すっごいもの”を見つけたい二人が穴を掘ります。二人の探す、”すっごいもの”って何だと思います?
☆際立った特徴
- 男の子2人が庭で深く深く穴をぼる、探求心・好奇心旺盛の二人の冒険。
- 下に掘り進めたはずが、上空から落ちて…。不思議な体験をする二人。
- 最初と最後に登場するおじいちゃんの家が何だか少し違うみたい・・・謎が深まる
☆読み聞かせのポイント
- 「もう少し先だよ!」「そこを曲がらないでー」と宝物の場所を教えてあげましょう。
- 不思議なことが起こります。親子で「これはどういうことだろう?」と話してみるのも面白い。
- 前半と後半で庭の様子が違っています。間違い探しのような感覚で探してみるのも◎
☆あらすじと書店員の感想
「すっごいものを見つけるぞ!」と掘り始めた二人。どんどん掘り進めるけど、何も見つかりません・・・。土の中が断面図になっていて、読者に見せる描き方が面白い!
どんどん掘り進めていく二人は、何を探しているのでしょう。「すっごいもの」と言っています。すっごい何でしょう?大きな宝石でしょうか?それとも金銀財宝が入っている宝箱でしょうか。もしそうだとすれば、二人は惜しい所を掘り進めています。
もっと右を掘っていたなら、すぐに見つける事が出来たのに。もう少しルートを変えないで掘り進めたら見つけられたのに。という場面だらけです。
というのも、読者には土の中の断面図が見えるように描かれています。
掘っている当人は知る由もない事実を、読者だけ知ることが出来ているので、「もう少し先だよ!」「そこを曲がらないでー」と教えてあげたくなります。
断面図を読者に見せている描き方がとっても面白いなと思いました。掘れば掘る程、読者も探している気持ちになり、気がつけば「そこそこ!もう少し!」と、力が入ってしまう自分がいます。
穴から落ちて、行きついた先には、穴があるはずのおじいちゃんの家の庭。良く観察してみましょう。実は植えてある木も、家に飾られている花の色も先と後では違ってます。本当にさっき二人がいたおじいちゃんの家なのでしょうか?
あっちを掘ったり、こっちを掘ったり、二手に別れてみたりして、なかなか見つからない”すっごいもの”を求めて、どんどん掘り進める二人でした。しかし見つかりません。そして今度こそ!と下に向かって真っすぐに掘り進めます。掘って掘って深い場所まで来た時に、二人はとうとう力尽きてそこで休むことにしたのです。体は泥だらけ。食べる物も飲み物もありません。
そして目を閉じれば一瞬で眠りにつくであることが見て分かってしまう程、二人は疲れています。
深い深い穴の中で、深い深い眠りについた二人。まだ元気が余っていた犬が、穴の下の方に何か良い物が埋まっている気配を感じて、二人が寝ている横で穴を掘り始めました。
そして、急に土が無い場所に抜けました。
パラパラパラ・・・そこは無の空間です。そのまま犬だけでなく、サムとデイブもパラパラパラ…と、土や石ころと一緒に落ちていきました。
落ちながら二人は目を覚ますのですが、そこは一体どんな空間なのか、読者も落ちている二人にも分かりません。落ちて落ちて落ちて…とうとうドスンと落ちました。なんだか見た事のある場所です。パラパラパラ・・・と、上空から土が少しだけ落ちてきます。「あれ?ここは?」二人は何が何だか分からずに呆然と座り込み、しばらく考えた事でしょう。
なんとそこは、”おじいちゃんの家の庭”だったのです。
二人は”すっごいもの”を見つける事が出来たのでしょうか。出来なかったのでしょうか。
私は、二人は”すっごいもの”を見つけたのではないかと思いました。
最初はもしかしたら宝石や宝箱を見つける気で、掘り始めたのかもしれません。結局それらは見つける事が出来ませんでした。
しかし、ラストシーンで庭に落ちてしまった二人が、あっさりと家の中に入って行く様子を見ると、「宝石を見つけられなかった。悔しい!」と思っているとは思えないのです。
どちらかというと掘り進めた穴から落ちて自分達が空から降ってきた事に驚き、他の人は出来ないような不思議で楽しくて奇跡的な体験をしたのかもしれないと、感じているように想えたのです。
しかし、「なんか、ちょっとすごかったね」とあっさりと交わした言葉の中には、まだ実感の湧いていない感じが見て取れます。
家の中に入って行った二人は、どんな会話をしていると思いますか?
まだ幼い子ども達です。我に返った二人は「これってすごい体験をしたんじゃなかろうか。宝石やお金より、とんでもなく価値のある体験をしたんじゃなかろうか」と、ジワジワと実感が湧いて、興奮して大騒ぎしているかもしれませんね。
さて、穴を掘る前と二人が落ちてきた後の、庭の様子に目を向けてみましょう。
植えてある木の実が違っています。最初はりんごで、後は洋ナシです。家に飾られている花の色も待ってたネコの首輪の色も変わっています。
これはどういうことなのか。
このお話にはもっと深い何か裏設定があるのでしょうか。ん?ん?という違和感に、読者は謎が深まってきます。
・・・もしかして、地球の裏側に来てしまったのか、そっくりだけど異世界に来てしまったのか、それとも・・・。
- 作品名:サムとデイブ、あなをほる
- 著者名:文 マック・バーネット 絵 ジョン・クラッセン 訳 なかがわちひろ
- 出版社:あすなろ書房